▼テーマは「時の流れを感じる」です。
夏過ぎて心身共に落ち着く秋になりました。秋は、朝も昼も夜も良き。川や海の水の匂い、山や野に吹く風の香り。どれも風情がありますなあ。
ところで量子力学の知見では時間の流れなどないそうです。
そ、そんな…。
とはいえ、我われはやはり時の流れを感じます。今回は古典力学的に(笑)時の流れを感じてみました。

【和歌のスタイルで表現してみた】
Usage #28
時の流れの早さに驚く心として。

暑いわ涼しいわと言ひ暮らして神無月 流れてはやき月日なりけり

[元歌]
昨日といひ今日と暮らしてあすか川 流れてはやき月日なりけり

意味:昨日はどうした、今日はどうすると言いながら暮らしています。飛鳥川の流れのように月日の流れも早いです。春道 列樹/はるみち の つらき(? – 920)作。
[解説]
流れが早いのは川だけでなく、月日も、ですわい。

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Usage #29

最近は年齢を意識するようになりましてね、の心として。

いつもいつも身の冴えぬのは変わらねど 昔は老いを嘆きはせじ

[元歌]
いつとても身のうきことはかはらねど 昔は老をなげきやはせし
意味:
いつも身の憂きことに変わりはない。けれども、以前は今ほど老いを嘆いたりしなかったような…。藤原 敦頼/ふじわら の あつより(1090 – 1182)作。
[解説]
気持ちは変わらない。けれども、昔は今ほど老いというものを意識してなかったなあ、と。

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Usage #30
月はこの世を写す鏡だったのね、の心として。

月見る人は月に何を見つけけむ 月はこの世の鏡なるらむ

[元歌]
見る人に物のあはれをしらすれば 月やこの世の鏡なるらむ
意味:見る人に物のあはれの感情を悟らせるので、月はこの世の鏡というものだ。崇徳天皇/すとくてんのう(1119 – 1164)作。
[解説]
秋といえば月。人は月に何を見ているのだろう、と思って。三脚を立てて高倍率の双眼鏡で月を見ると、気づくことは二つ。一つは月の動きの早いこと。もう一つは、言うほど凸凹は分からん、こと。

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Usage #31
この秋をどう過ごそうか、の心として。

街明かりと星と月を眺めつつ いかで秋を楽しく暮らさむ

[元歌]
露くだる星合の空をながめつつ いかで今年の秋を暮らさむ
意味:露を地上にもたらす星の夜空を眺めつつ、どうやって今年の秋を暮らそうかと思う。
藤原義孝/ふじわら の よしたか(954 – 974)
[解説]
夕方から夜、街明かりと一緒に空で光る星や月を眺めながら、さてこの秋をどう過ごそうか、前向きに考えたいものです。

profile

安部 博文
あべ・ひろふみ:1953年、大分市生まれ。大分大学教育学部物理学科卒業、師匠は田村洋彦先生(作曲家)。由布院温泉亀の井別荘天井桟敷レジデント弾き語リスト(自称)。大分大学で第1号の経済学博士、指導教員は薄上二郎先生(現青山学院大学経営学部教授)。国立大学法人電気通信大学客員教授。電通大認定ベンチャーNPO法人uecサポート理事長。
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