別府湾の自然の恵みを浴びた『別府湯けむりかぼす』の名を広めたい
乾しいたけと並び、大分県が日本一の生産量を誇る農産品である、かぼす。江戸時代に臼杵市で栽培が開始されたのが始まりとされ、竹田市、豊後大野市等が有名産地ですが、別府産かぼすのブランド化に取り組んでいるのが有限会社かぼす本家の星野賢一代表取締役です。
「当社で取り扱うかぼすのほとんどは、県内産地から仕入れたものを使っていました。しかし天候不順や突発的な災害で不作となる年は製造に支障をきたすため、別府市内の農園を2010年に譲り受け、自ら栽培を始めました。最初は私個人で始めたのですが、2019年に法人化。今では当社製品の1/3は、自社農園で栽培したかぼすを使うまでになっています」
同社は、かぼすや柚子といった柑橘系加工品の製造販売会社。主力商品のかぼす果汁のほか、ポン酢、ドレッシング、香辛料とアイテム数は豊富で、OEM商品も多数受注しています。もともと福岡県の大手食酢メーカー社長が、閉業を考えていた前身となる加工会社の事業を承継したのが始まり。現在は息子の星野賢一氏が経営に携わっています。
「福岡生まれの私は、かぼすと聞いても最初は正直、ピンときませんでした。ところが今ではすっかりハマってしまい(笑)、出張先にも必ず持参して、かぼすの良さを紹介しています」
“かぼす愛”が増すばかりの星野代表は、商品企画や料理レシピの開発にも積極的で、自ら開発したかぼす風味の金平糖『confeito〜kabosu taste〜』は、2019年度『日本ギフト大賞』(主催 : 日本ギフト大賞選考委員会)を受賞。果汁を搾ったあとに大量発生する皮を活用したドライフルーツも、SDGs時代とマッチした商品として話題を呼びそうです。
一方、かぼす本家では、別府市内のみで収穫されたかぼすを『別府湯けむりかぼす』と呼んでいます。別府市農業委員会委員でもある星野代表は、こう話します。
「かぼすの収穫量は、別府市内だけでも年間約200トンはあります。温暖な海沿い育ちのかぼすは皮が薄く、この特徴を差別化してブランド戦略に取り入れることは有効です。かたや日本一の温泉地“別府”の名は、圧倒的に知名度が高い。別府の農業が廃れないためにも、この名称を使わない手はありません。ネットショップを開設し、BtoBだけでなくBtoCにも力を入れている当社としても、情報発信に力を入れていきたい」
これらを含め、同社が目指す理想像を実現するには、人材育成の重要さにも話が及びました。
「企業の総合力は、社員の力に依るところが大きい。当社で働くことを誇りに思える社員を、たくさん育てていきたい」
合言葉は「一人ひとりが地域でナンバーワン!」と星野代表。かぼすに注ぐ愛情と情熱は、従業員にも向けられています。