OEM商品に加えて独自の提案商品への足がかりにも
2018年の国民文化祭、2019年開催のラグビーワールドカップ日本大会の大分開催など、大分県観光の隆盛が期待されています。観光立国を目指す我が国ですが、ここ数年は訪日外国人も急激に増加し、別府市内では新しいホテル・宿のオープンも相次いでいます。
ところで、日本人にとって観光旅行といえば、お土産のことを忘れずにいられませんが、どうやら海外とは少し事情が違うようです。別府市で土産品製造卸を行う有限会社ぶんごやの中畑三男代表取締役社長は、次のように話します。
「日本人は旅行に出かけると会社の同僚や知人にお土産を買って帰りますが、海外に同様の文化はありません。むしろ自分のために旅の記念品を購入する程度でしょうか。九州でも中国、韓国、台湾などからのインバウンド客が増えていますが、熊本や福岡に船で寄港し、各県を周遊して帰りの港で買い物をする方がほとんどです。残念ながら期待していたほどの売上増には結びついていません」
業歴30年を超える同社は、中畑社長と長男の中畑祐則常務取締役によるツートップの強固な営業力により、大分県内全域の土産品店や道の駅、サービスエリア等の取引先を有しています。時代を見据えた新規事業にも積極的で、例えば今や定番のお土産商品となっている大分県産ゆず胡椒を使ったオリジナル商品も、いち早く手がけ、ヒット商品に結びつけています。
地域に密着した事業を展開してきた同社ですが、2016年に発生した熊本・大分地震では、同業者ともども大きな損失を被っています。「大型連休前だっただけに、大量に仕入れていた商品が台無しでした」と当時を振り返る中畑社長。これを教訓に、最近は安定した売上を確保するためOEM商品にも力を入れており、冷凍ホールケーキやアップルパイなどの製造卸も実施。その販路拡大の営業活動をしていた時に、取引先から紹介された案件がプリントクッキーの製造です。
「野球やサッカーなどプロスポーツチームの選手や、アイドルやキャラクターをプリントしたクッキーの需要が急激に高まり、製造元を探しているというのです。その将来性を社長と綿密に検討した結果、引き受けることにしました」(中畑常務)
流通の関係から熊本市内に新規工場を建設し、イラストや写真を転写できる最新鋭の機械設備を導入。2019年3月から稼働を開始したばかりです。
「さっそく大量の受注が入り、忙しい日々を送っています。将来はOEMだけでなく、販促用の企業ノベルティなど、広がりを持たせていきたい」と中畑常務。
新たな挑戦は、始まったばかりです。