年明け早々から日本を代表する巨大メディアグループが大揺れしています。
この手の問題に必ず出てくる重要キーワードが「企業風土」。多少のニュアンスの違いはありますが「企業文化」とも置き換えられます。そして、この「文化」という曖昧な単語を「カルチャー」と訳すと、様々な意味を含んで私たちの生活の中に浸透していることに気が付きます。

社会人として30数年、PARCOという企業に身を置いた自分にとって、「カルチャー」は常に「サブ」であり「マイナー」なポジションでした。「アンチ」ほど重く、激しくはない、「軽チャー」(死語)。2020年代の渋谷パルコは、グローバルコンテンツである「アニメ」「キャラクター」「ゲーム」カルチャーのメッカとして、堂々とメインカルチャーのラスボスとして君臨しています。

そこで今あらためて注目したいのが、かつては「アパレル」事業がポートフォリオのメインであった株式会社ジュンの最新プロジェクト「V.A.です。
「Various Artists」を意味する店舗は、同社が運営していた飲食店モントーク跡地(東京・原宿。2022年3月閉店)に昨年12月オープンしました。物販+飲食スペースで構成されたショップはディレクターに藤原ヒロシ氏、山本宇一氏、高橋盾氏(UNDERCOVER)など、そのスジ界隈のビッグネームをこれでもかと起用。このニュースが流れた時、正直ちょっとお腹一杯というか、新鮮味に欠ける気がしました。しかし「JUN」という企業のこれまでのカルチャーに対する取り組みを振り返ってみると、自社の企業文化をブレずに守り続け、発展させる凄み(矜持)を感じます。

「V.A.」全体のコンセプトは
「様々なモノやコトが交差する場所として、日本だけではなく世界中から多くの人々が訪れるようなディスとネーションストアを目指し、新たなカルチャーを発信すること」。
一見すると当たり前なことを語っているようですが、このことをやり続けることは並大抵のことではありません。

JUNグループはシャトージュンロペクラブを保有し、アパレル業界が恒常的な不振に陥った時も、時代に合わなくなったブランドを廃止することはあっても、企業経営には重たい「ワイナリー」や「ゴルフ場」を手放すことはしませんでした。
グループを先導する佐々木進社長が2016年以来掲げている企業ミッションは「YOU ARE CULTURE」
この時の社長インタビューで「JUNって、洋服も売ってたんだ、と振り返りたい」というコメントを残していたことが今でも記憶しています。

今どきのアーティスト・クリエーター達を招いて単発的にトークショーやセミナーを開催したり、学校的なアート関連イベントを主催する程度では決して醸成されない筋金入りのJUNの「企業文化」の一端を感じさせる「V.A.」にぜひお立ち寄り下さい。
個人的には神田の純喫茶エースの家具を引き継いだカフェは新たな東京名所になりそうでお気に入りです。

profile

柴田廣次
しばた・ひろつぐ/1960年、福島県郡山市生まれ。筑波大学を卒業後、1983年株式会社パルコ入社。2004年〜2007年には大分パルコ店長を経験。2018年2月に独立し「Long Distance Love 合同会社」を設立。
■Long Distance Love合同会社
https://longdistancelove.jp
■コラムインコラム
年初に必ず買って、読まずに1年が経ってしまいがちな雑誌
今年も迷わず買ってしまった「WIRED  THE WORLD IN 2025」(プレジデント社)。あらためて確認したら2018年から確実に買っているようです。サラリーマン時代はなぜか毎年会社四季報業界地図」(東洋経済新報社)を買って、特に仕事に関係ない業種の会社の繋がり(図)を眺めては何かを知ったような気になっていました。
「WIRED」のその年の「最重要キーワードを読み解く」号は、正直ピンとこない、というか理解が追い付かないことがほとんどです。そりゃ普段からあまり接していない分野(TECHNOLOGY・SCIENCE・HEALTH etc.←あえて英表記で)の最先端で活躍する人達のインタビューや主張などいきなり活字(翻訳)で読んでも…。
ではなぜ毎年買い続けるのか。実はオープニングの松島倫明編集長のまえがき(EDITOR’S LETTER)の見出しが毎回秀逸なんです。2025年のそれは未来という名の建設現場。何かグッとくる、名言ですね。
肝心の内容の説明はネタバレ禁止ということで、ご興味のある方は(この1ページのために)ぜひご購入下さい。
本が売れるかどうかはタイトルもしくは帯に書かれた推薦者のネームバリュー&コメントで8割(?)決まるとか言われますが、私の「WIRED」購入動機は、まさに「まえがき命!」です。ネットで買うことが多いので事前確認(立ち読みとか)できないリスクもありますが、期待外れの場合は本文をしっかり読むことにしています(笑)。