「コ・ワーキング・スペース」や「シェア・オフィス」という言葉(サービス)が馴染んでから随分経ちますが、あらためて両者の違いは何なのかと問われると、意外に漠然と混同して考えていることに気づきます。
「コ・ワーキング(Co-Workinng)」は、文字通り一緒に働く場所のこと。様々なバックグラウンドや所属(会社)を持つ人たちが、互いに刺激し合いながら共創する空間(環境)で「繋がる」、比較的小さな規模で、リノベーションされたビルやカフェを利用するイメージです。
一方「シェア・オフィス(shared office)」は、事務所(機能)を物理的に共同使用する、極めてビジネスライクなサービスと言えます。都心の一等地に大きなビルを構え、IT系企業やアパレル等が海外企業さながらの佇まい(働き方)を誰かに向かってアピールしているようなイメージがありました。
…そう、コロナより前は。
しかし、新しい働き方として「リモートワーク」を推奨(強制?)されると、自宅とメインの職場以外の“第3の場所”として働く場所の「シェア」や、新規事業創出のための「Co-Working」の意義や機会が減り始め、その結果、東京ほか大都市圏では市場が縮小し、相場(賃料)が大きく下落しつつあります。
一方、地方中小都市では、行政の奨励(補助金援助)により、いわゆる空きビル問題解決の救世主として、雨後の筍のように急増する状況も生まれました。
ところが、そのブームもあっという間に鎮静化し、空家問題ならぬ「空きシェア・オフィス」、及び人が集わない「コ・ワーキング・スペース」急増問題が浮上する事態を引き起こしています。外資系のシェアオフィスのカッコよさに飛びついたり、熱い思いやビジョンを持たない者同士で繋がれる場所を求めたりした結果です。
そこで今回、ぜひとも紹介したいのが2023年8月、東京・池尻大橋にグランドオープン(リニューアル)した大橋会館です。
ちなみに池尻大橋と言えば、渋谷と中目黒に挟まれた、狭くてちょっと地味なエリアでしたが、コロナ禍前後から昔ながらの商店街と、新しい世代による、新しいスタイルの飲食店が共存しながら独自の街文化を育んできました。
その象徴とも言えるのが「大橋会館」なのです!
築48年の宿泊施設を大幅リニューアルし、カフェ・バー・レストランからショップ&スペース、シェアオフィス、ホテルレジデンスからサウナまでを備えた小規模(!)複合施設です。
一見すると流行りの機能を詰め込んだ一過性のビルのように思えますが、その中身やコンテンツのクォリティは「常に何かが生みだされる有機体(エコシステム)」というべき存在感を示しています。
ちょっと大げさかもしれませんが、これは18世紀に反映した、ヨーロッパ(特にフランス、ドイツ)の宮廷・貴族文化の舞台となった「サロン」のような社交場の2020年代・日本版かもしれません。
しかし、お金持ちグルメや胡散臭いアート関係者の溜まり場ではなく、名刺交換やビジネス書を速読するサラリーマンも見当たりません。
音楽(MUSIC)やアート(ART)や、新しい発見(DISCOVERY)を求め、ジャンルレスな生活を志向する「健全なチョイ悪(M.A.Dな人達)の秘密基地」的趣きのスペースです。
つい先日、オープンした虎ノ門ヒルズ等、大規模ゾンビ開発が止まらない東京で、いわゆる「コレクティブな街づくり」を進める下北沢・蔵前・馬喰町・池尻大橋の魅力は一段と輝きを増しているようです。
【お知らせ】
年内に「Long Distance Love LLC.」代表の私・柴田と、先日創立10周年目を迎えた大分のクリエイティヴ・カンパニー「株式会社Cont」代表の河野氏ふたりによるプロデュース・ユニット「THE M.A.D BROTHERS」が、新しいカルチャー共創サロン「健全な地獄(Healthy Hell)」をオープンさせる予定です。場所は大分市内の某商店街の中。
ぜひ過大なご期待を!