経年劣化する銀座⁉~今や100均ショップの聖地‼
銀座にユニクロがUNIQLO GINZAとして開店して早10年。
当時は「老舗・高級ブランドショップvsファストファッション」的な、誰もが想い付く賛否渦巻く反応でしたが、あっという間に「GINZA」に馴染んでしまったことは明白な事実。その時は「俺たち、銀座の商売人は懐が深いから!」的な負け惜しみコメントも散見していました。

その後、銀座松坂屋跡地が満を持してGINZA SIXに生まれ変わって早5年。
やはり当時は「進化する銀座」的な、これまた想定内の反応に支えられ、さらインバウンドの大きな追い風に乗ってロケットスタート…と思いきや、中途半端な高級路線とカルチャー・トレンド志向が嚙み合わず、まさかの低空飛行。そこにコロナ禍が押し寄せて、開業4年目で大規模リニューアルを余儀なくされたことは記憶に新しいところ。

いわゆる「銀座」を「GINZA」に変えた「UNIQLO GINZA」と「GINZA SIX」の明暗を分けた戦略の違いは何か?
それは常に外部(顧客・クリエーター・出店エリア等)と「繋がっていたい」UNIQLOと、内部(大手ゼネコンや百貨店のお得意様である海外有名ブランド等)と「内輪&上目線だけで盛り上げたい」GINZA SIXの企業姿勢の差に他ならないと言えます。

そしてwithコロナ期に入った(であろう)2022年、「銀座」改め「GINZA」にさらなる激震が発生しました。
あのインバウンド、特に中国からの爆買い集団が姿を隠していた隙に、いわゆる100均ショップ(100円以上の商品も多数扱うが、基本は同一価格・低価格が大集結しているのです!
100均の御三家DAISO」「Seria」「3COINS」が銀座のど真ん中に一気にオープンしたことは、前述した2店舗よりインパクトがありました。

広島県発祥の100圴最大手、DAISOは、かつてのプランタン銀座~マロニエゲート跡に、なぜか2番目の大型店を出店したUNIQLO TOKYOの後を追って、文字通りの「旗艦店」を出店。2つの新業態含みながら、渋谷(SHIBUYA)を超える規模を誇っています。しかもGW直前という絶妙なタイミングでの出店は、夏休み期間でも大盛況。もちろんインバウンドなんて関係無し、連日老若男女でごった返しています。

さらに100円均一価格に愚直にこだわる、御三家の“オシャレ番長”的「Seria」は、かつての老舗百貨店・名鉄メルサ系ショッピングビルイグジットメルサに、「DAISO」開店の約1か月後にオープン。同じフロアの超人気ショップ「ワークマン女子と「繋がる」ことによって、大きな賑わいづくりに成功しています。

そして「300円以上」ではありますが、世間的には100均の一画として認識されているであろう「3COINS+plus」もGWに堂々オープン。
これにて“100均の聖地”が銀座、いや「GINZA」、いや「ギンザ」に誕生したのです!

この「GINNZA changeギンザ~100均ショップの聖地化」計画の仕掛け人は、どうやらメルサのようです。
実は2021年4月にWattsという比較的地味な100均ショップを秘かに出店させていました。この反応をじっくり見ながら「二匹目のドジョウ」を狙って、一気に御三家が「GINZA」に襲い掛かってきたというわけです、たぶん。

銀座・鳩居堂前が路線価全国一とか、インバウンド対応で銀座三越が中国人(&中国語が話せる)スタッフを300人増員とか、威勢が良い話で成り立ってきた「銀座」が、100均を受け入れる「懐の深い街」になることが良いのか悪いのか、God Only Knowsです。

profile

柴田廣次
しばた・ひろつぐ/1960年、福島県郡山市生まれ。筑波大学卒業後、1983年株式会社パルコ入社。2004年〜2007年には大分パルコ店長を経験。2018年2月に独立し「Long Distance Love 合同会社」を設立。
■Long Distance Love合同会社
https://longdistancelove.jp
■「TOKYO LAB 2019」@渋谷クラブクアトロ
Long Distance Loveプロデュースイベント
https://youtu.be/_w89k-PK_O0
■コラムインコラム「最初はヤラれた、と思ったけど…な本
何せタイトルが音楽とファッションですから、パルコ~伊勢丹を通過してきた身としてはもちろん見過ごせません。しかも著者があの青野賢一氏。泣く子も黙る(?)もとBEAMSのクリエイティブ・ディレクターにしてDJ/文筆家もこなす、まさに勝手にライバル視してきた存在(ちなみに私より8歳下)の渾身の一冊。とにかくamazonで即購入したものの、なかなか怖くて本を開くことができなかったのですが、案の定、第一章「音楽表現とファッション性におけるジェンダー~強調、転倒からパーソナルな領域へ」の掲載写真は私の永遠のアイドル「ジョニ・ミッチェル」のワイト島フェスティバル(1970年)出演時のもの。この瞬間「ヤラれた…」と直感したわけです。その後も本の副題「6つの現代的視点」に合わせて、見事な論評と引用(写真含む)が展開が展開されます。まるで比較文化論の研究者のような斬新な視点と切れ味鋭い文章に、意味もなく「叶わないな…」と呟きかけたその時、ふと感じたのが「専門学校のテキスト(教科書)みたいだな」。読み進めていくうちに「音楽×ファッション」というテーマのリアリティとか生々しさに乏しい印象が強くなってきました。とにかく受験参考書レベルで脚注や引用が多いので、全体のストーリーが掴めなくなってくる感じです。著者がDJという顔を持っているので、もっと「流れ」「繋ぎ」を意識してもらえたら……なんて、負け惜しみ感満載の〆ですが、とにかく画期的な「音楽とファッション」のテキストであることは間違いありません。私も「これに負けないような本を出したい!」と思わせてくれたありがたい一冊です!