■リアル「東京のブルックリン」な街、清澄白河
長かった緊急事態宣言が完全解除され、ようやく「New Normal Life with コロナ」を具体的にイメージできるようになってきました。スティホーム中心の生活は、あらためて自分や家族が住む街の良さを実感した人も大勢いるのではないでしょうか。
例年、住宅関連企業やメディアが「住みたい街ランキング」を発表しますが、その度に今住んでいる街と比較して、ため息をついたり胸をときめかせます。近年のランキング上位は常連の吉祥寺や表参道、最近では恵比寿、中目黒等、流行の最先端、特にメディアを賑わすグルメや花見の名所エリアに人気が集中していました。しかしコロナ旋風が吹き荒れ、人の流れや関心に大きな変化が出てきたようです。
そこで注目したいのが東京のブルックリン、清澄白河。
……というと、「それは蔵前なのでは?」と即座に突っ込むTOKYO通の方も大勢いらしゃると思います。しかし、リアルにガチに「東京のブルックリン=清澄白河」と断言してしまいましょう。
本物のNY・ブルックリンは渋谷ばりに大規模再開発が進み、今やマンハッタンを凌ぐセレブな街に変貌してしまった感があります。しかし刺激に満ちた音楽やアートにあふれ、ユニークな食文化等、いつも新たな発見がある街の佇まいは変わりません…からの、清澄白河です。
都営大江戸線や地下鉄半蔵門線が乗り入れるほど交通の便に恵まれた清澄白河ですが、いわゆる鉄道沿線にありがちなチェーン店系スーパーや、今や便利な街に必須のユニクロ&GU、100均ショップも無し。さらに若者の生活に必須のネットカフェも無ければ、全国民共通の娯楽施設・カラオケBOXも見当たらない。このように街にとって必須スペック的な店が何もない清澄白河が、なぜに「東京のブルックリン」なのか?
理由の一つが東京都現代美術館(MOT)の存在です。
美術館があるエリアは都内にも地方都市にもたくさんありますが、(極めて個人的な嗜好ですけど)その名の通り「現代」的な展示企画の数々は群を抜いています。いわゆる名画系(=上野公園系)美術館やコマーシャル・メディア系(=六本木系)美術館とは一線を画し、国内外問わず様々なジャンルのアーティストやテーマをユニークな展示方法で五感六感に刺激を与えてくれる数少ない美術館です。
加えて隣接する木場公園と合わせた景色は、高層ビルに囲まれた狭い空しか見ることができない他の東京の街やNYマンハッタンと違い、まさにブルックリン的な環境です。
MOTの存在が出店の決め手だったというブルーボトルコーヒー日本1号店(2015年)が、清澄白河だったことも記憶に新しいところです。
他にもインディペンデント系コーヒーショップが街中(住宅街)に多数点在するのもブルックリン的。
そして近年の清澄白河人気を決定づけているのが、パン屋の存在。1.5キロ圏内に約30店のパン屋が存在する、パンマニアの聖地的な街なのです。
昔ながらのお惣菜・菓子パン中心のお店から、ブルーボトル「サードウェイヴ」的な個性派パン店、ちょっと行き過ぎの感が否めない高級食パン店まで、とにかく多彩。コーヒー&パンショップ巡りだけで1年を楽しく過ごせそうなくらいの充実ぶりです。
他にも店名にダイレクトに“ブルックリン”を掲げた「BROOKLYN DELI CRAFT BEER」や、ブルックリン発祥を謳ったラーメン屋「YUJI Ramen TOKYO」、小学校時代の理科の実験で使った器具を販売したり、研究用の耐熱ガラス素材を使って、じっくり水出ししてコーヒーを提供する風変わりなお店(「リカシツ」「理科室蒸留所」)等、とにかくインディペンデント感満載な街です。
街の中心を流れる川縁には「(松尾)芭蕉俳句の散歩道」があったり、神社やお寺が何軒も隣り合わせに立っていたり、過去と未来がシームレスに混在する清澄白河。
本当の東京の魅力はこんなところに隠れています。