■整形手術に失敗した街…渋谷
CORONA禍のなんちゃって「STAY HOME」で不覚にもハマってしまったのが、Netflixの韓流ドラマ。ご多分に漏れず『愛の不時着』からスタートして『サイコだけど大丈夫』、『いつもおごってくれる綺麗なお姉さん』の怒涛の3連発へ突入。日本のドラマとはスケール(お金の掛け方)が違い過ぎるだけでなく、脚本の素晴らしさ(日本やハリウッドが競ってリメイクするほど)もさることながら、やはり主演女優の美しさに惹かれたのは皆さん一緒でしょうか。まるでサイボーグのような美しさ(プロポーション)に、このまま底なしの魅力にはまっていく…かと思いきや、みんな同じ顔に見えてきて。人気女優の多くが整形済と言われる整形大国、韓国。そして日本のメディアでも度々紹介される「整形手術に失敗した(一般)女性の顛末…」。
前置きが長くなりましたが、今回のテーマは人間の(身体の)整形の話ではなく、街の整形手術失敗の話。完成(?)が2027年というまだまだ先の「渋谷」は「SHIBUYA」への、とんでもない整形手術(再開発)が進行中です。
ざっくりですが、もともと渋谷は「東急VS西武」の競争原理で開発が加速した街。〝コンサバ東急〟が「109」で浮ついた若者を取り込む一方、〝カルチャーの西武〟は「PARCO」を自由に泳がせて常に時代の先を行くメッセージを発信…。
そして名の通り、山あり谷あり、横路ありの陰影に富んだ街は東京のどこよりも刺激的で、インバウンド云々など言われる前から、外国人にとっても興味津々のミクスチャーでハイブリッドな衣装をまとっていました。
時代は流れ、オリンピックも流れ(とりあえず延期ですが…)、いま目の前に広がる景色はジョージ・オーウェル『1984』や『ブレードランナー』のようなダークな近未来(ディストピア)でもなければ、能天気な「ユートピア」「桃源郷」でもない、ぱっと見、区別のつかない、ただの高層ビル兼商業施設兼IT企業のオフィスビル群。
個性的だった横路(「飲んべえ横丁」「スペイン坂」…)の灯は消えかけ、大手不動産ディベロッパーがプロデュースした商業施設の装飾に過ぎない「渋谷横丁」、もはや本来の趣旨とは別物の「ハロウィン」で見知らぬ同士が一夜限りに大騒ぎして、DJポリスなる警察官の余興を見せられる街に変貌してしまいました。
渋谷中心からファッションテナント退店が加速化
新しい土地を開発して、100%新しい街を創るプロセスと違って、渋谷のような歴史を持った街の「整形手術」とは、まさに完成することが無い(想定していない)「まちづくり」のこと。それは大手ゼネコンや電鉄会社とディベロッパーがタッグを組む程度では到底成しえない『ネヴァーエンディングストーリー』です。
誰かが勝手に、前もって描くイメージ(グランドデザイン)なんて存在しない、虚像かもしれません。そう、「街」はフレーム(枠=規制)の無いジグソーパズルのようなもの。何枚ものピースがランダムに組合さることによって初めて形が見えかけてくる…。でも最後の1ピースはなかなか見つからない。そんな、もどかしさがいつまでも心惹きつけて止まないのが「まちづくり」だと思います。
「渋谷の整形手術」がこのまま大失敗で終わるのか、何とか施術方法を修正して良い方向に迎えるのか。
そのためにはジグソーパズルのピース(コンテンツ)をどんどん増やして、もう一度「収拾のつかない状態(カオス)」にする(戻す?)しかありません。
もちろん世界中の「渋谷大好き」な人達と一緒に。
「NYブルックリン」の過去と未来が共存する再開発
『記憶のなかの街 渋谷』中林啓治著(河出書房新社)