「あの人に聞きたい 堀川 誠さん/有限会社湯山工芸 代表取締役(鶴見支部会員)#1」からの続き
■既存の枠にとらわれない挑戦を続けていく
──今後はこの工場を拠点に、どのような取り組みを進めていくんでしょうか?
堀川 先ほどお話しした竹材の入手に関する課題は、当社だけで解決できるものではありません。コロナ禍によって発注量は減少したとはいえ、どの加工業者さんも十分な竹材が入手できずに生産が追いつかないという状況が続いています。そこで考えているのが、新工場を竹材供給の「ハブ」にすること。具体的には、工場に保管する竹材を「共有の財産」として、当社だけではなく他の加工業者さんにも利用していただくんです。九州一の大きさを誇るこの工場であれば相当数の竹材が保管できますから、この取り組みは製竹から加工までをトータルで担えるようになった当社の使命とも言えます。今後は他の加工業者さんとの横の連携をさらに強化しつつ、工場のハブ化を早期に実現させたいですね。
──別府の製竹業者が減った背景には、安価な中国産竹材の流入も影響としてあると思います。
堀川 確かに、安価な中国産に押されているという現状はあります。しかし、品質や安全性で選ぶのであれば、国産の竹材にも優位性があるでしょう。実はこの点について、近年は追い風が吹いています。その追い風とは「脱プラ」です。一例を挙げると、プラスチックのストローから紙や竹のストローに切り替える流れがありますよね。ストローは口に含むものですから、品質や安全性を重視する消費者は厳しい目を向けるでしょう。その時に、国内の竹材にスポットが当たるのではないかと考えています。竹を薄く加工するのは難しいのですが、今まではお土産や伝統工芸という用途をメインにしていた竹材の新たな活用法を考える上では、チャレンジしない手はありません。
──お土産や伝統工芸という既存の枠にとらわれない目線を持つことで、竹材の新たな活用法が見えてくるんですね。
堀川 まだ私たちが見つけていないだけで、竹材が担える分野は多いと思います。その可能性を見つけていくことも今後の課題ですね。これは先代が話していたことですが、東南アジアには竹でできた家があり、一定の需要があるそうです。耐久性など解決しなければならない課題は多そうですが、竹を建築資材に使用できるようになれば、竹材の生産量は一気に跳ね上がるかもしれません。夢物語で終わることもあるでしょう。ですが、「可能性を模索し続ける」という先代のスピリットは引き継いでいきたいですね。そしていつか、新しく生まれたアイデアが、別府の伝統産業を守る一助になればと思っています。