物を壊さずに表面や内部の傷などを調べることで劣化状況を判断し、工場設備や橋梁といった構造物の補修・長寿命化に活かす「非破壊検査」。この業界で最先端の技術力を有し、着実な成長を遂げてきた株式会社ジェイテックが、大分市三佐地区にビジネスホテルを軸にした複合施設「AB(アベ)タウン」の建設・運営に乗り出しました。高城支部会員でもある同社の阿部清治代表取締役社長に、新規事業への想いやグループの今後についてお話を伺ってきました。
■検査・土木を中心に10のグループ企業で構成
──ジェイテックグループは、非破壊検査技師の派遣を行う有限会社エス.エイ検査サービスの創業を起点に、徐々にグループの規模を拡大させてきたようですね。
阿部 私自身は日本工業検査株式会社(本社・神奈川県)で非破壊検査技師としての技術を磨いた後、1990年に独立しました。当初は個人で大分県内の石油・化学プラントの検査を請け負ってきたのですが、事業規模を拡大させる中で、まずは非破壊検査技師の派遣を担うエス.エイ検査サービスを1996年に立ち上げました。これを機に営業エリアも県内外へと拡げ、火力・水力・原子力発電所や製油所、化学プラントなどで検査実績を重ねながら、2006年には海外の先端技術機器を取り扱う輸入販売業を行う株式会社ジェイテックを設立しました。
──現在は10社のグループ会社で事業展開されています。
阿部 橋梁やトンネルといった構造物の診断を担う西日本検査株式会社、補修工事を請負う株式会社みらいテクノロジーなど、基本的に「検査」や「土木」の会社で構成しています。グループの中には、後継者不在から事業承継に至った老舗の土木建設会社である株式会社川邊組(大分県豊後大野市)や株式会社寿建設(佐賀県)のようなケースもあります。このように一連の事業拡大を通じて検査と土木をセットにしたビジネスモデルをつくり上げました。これに伴い非破壊検査においては80社の取引先を有するまでになり、業界では県内トップクラスの位置を確保するまでに至っています。
■ビジネスのフィールドは中東にまで広がる
──非破壊検査に加え、検査装置の輸入販売業まで行う国内企業は珍しいのでは?
阿部 そうかもしれません。非破壊検査の先進国ではアメリカやドイツ、そしてイスラエルがあげられます。イスラエルと聞くと意外に思われるかもしれませんが、非破壊検査装置は地雷を探知する目的で使用されるなど軍事機器の技術を応用して造られています。パレスチナやシリアといった周辺国の攻撃から自国を守るためにこの技術を活用してきたイスラエルには、一日の長があるというわけです。
──なるほど。しかし自らが現地まで足を運び、最前線に立って交渉を行う経営トップは少ないと思います。「欧米諸国ならまだしも、イスラエルまでは…」と考える企業が大半でしょう。
阿部 いえ、やろうと思えば、どこにだって行けますよ。行動力が私の強みでもあります(笑)。実はイスラエルには親日な方が多く、話してみると楽しい。その彼らの心を開かせる極意は何かといえば、「熱意」と「スピード」です。たとえば日本の企業と交渉する場合、まずは規模や歴史が信頼の前提となるケースが多いのですが、これが大企業になればなるほど意思決定のスピードが遅くなりがち。ところがイスラエルの場合、意思決定に時間がかかる企業は敬遠されます。当社のように決裁権限のあるトップが直接交渉し、さらに熱意のある中小企業経営者の方が気に入られるケースが多い。さらに言えば、その企業が東京だろうが地方都市だろうが、ほとんど関係ありません。コロナ禍で交渉の場は対面からオンラインが主流になっていますが、それでも世界中の取引先とのミーティングは頻繁に行っています。
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