「あの人に聞きたい 木原 寿彦さん/エアロシールド株式会社 代表取締役(南大分支部)#1」からの続き
2020年8月には横浜駅の駅ナカシェアオフィス「STATION DESK 横浜」に設置されました ※クリックすれば拡大されます
■コロナ禍が社会の意識を変えた
──地道な営業が実り、2019年にはJR東日本にもエアロシールドが採用されました。
木原 その前年にJR東日本グループのスタートアッププログラムで採用されたことがきっかけです。みどりの窓口や待合室で実証実験を行った結果、人の出入りが激しい時間帯でも浮遊菌が約90%減少することが確認され、JR渋谷駅の改良工事では作業員の方々が働く事務所にもエアロシールドが導入されました。この頃には、県内外のメディアがエアロシールドを取り上げてくださるようになりました。
──これまでの介護施設や病院に加え、新型コロナウイルスの感染拡大対策として、多くの人が出入りする場所への導入が進んでいるようですね。
木原 ホテルや飲食店、スーパーマーケット等の小売店からの問い合わせも増えています。大分県立図書館や大分市役所等の公共施設のほか大分空港にも導入いただきました。これは日本初の事例となりますが、私たちの地元である大分空港の安心・安全な空気環境づくりのお手伝いができることを大変誇りに思います。その他、プロ野球開幕に合わせて東京ドームの監督室やロッカールームや、ニッポン放送の全スタジオへの導入など、利用者や従業員の安心・安全対策として設置いただく企業が増えています。
──コロナ禍で感染症に対する意識が大きく変わったようてすね。
木原 コロナ以前から、当社は一貫して感染症対策の重要性を説いてきました。しかし介護施設や病院ならまだしも、他の事業者の方にはピンと来ないのが実状でした。ところがコロナ禍で東京オリンピック・パラリンピックが延期になり、観光業や飲食業はもちろん、あらゆる場面で影響が拡大していくに伴い、何かあってから動くのではなく、事前に対策を行うことの重要さを、社会全体が身近に感じるようになってきたのは大きいですね。
様々な場所で空気環境対策に貢献しているエアロシールド ※クリックすれば拡大されます
■空気環境対策を次代のインフラに
──コロナ収束までにはまだ時間がかかりそうで、国も「新しい生活様式」への啓蒙を勧めるなど、これからも多忙を極めていきそうですね。
木原 おかげさまで製品出荷数も増えていますが、当初から掲げていたミッション実現への想いは変わりません。単に製品を普及させるだけでなく、社会の大きな変化が必要だとも考えています。これは「水」にたとえれば、わかりやすいかもしれません。昔は誰もが水道水を飲んでいましたが、今ではコンビニの飲料コーナーに様々な種類の水が販売され、多くの方がより高品質で安全な水を求めるようになりました。私はそれと同じようなことが「空気」にも当てはまるようになるのではないかと思うのです。例えば「喫茶店に入る時は空気環境の対策をしているところ選ぶ」といったふうに。いわば「高品質で安全な空気を買う」ということですね。空気環境対策が電気やガスと同じようなインフラ、つまり「社会に不可欠なもの」になれば、より多くの方が安全な空気を享受できるようになってきます。これこそが、当社の実現したい社会なのです。
──「空気を選ぶ」ことが常識となれば、社会も大きく変化していきそうですね。
木原 消費者側のリテラシー向上も不可欠です。たくさんの方々に空気環境に関する正しい知識や方法を身につけていただくためには、まだまだ私たちの努力が必要です。そのための方策のひとつとして取り組みたいのが、誰もが簡単に「空気の質を評価」できる基準づくりです。これに関しては他社ともアライアンスを組み、客観的な目線で評価できる仕組みづくりをしていきたいと考えています。
──国土強靱化の観点から発足した「STOP感染症2020戦略会議」へも参画されました。
木原 これは災害発生時の感染症対策や平時からの備えを検討し、専門家の立場から政府等に政策提案を行うことを目的に発足した組織です。当社は「マスギャザリングにおける空気除菌・清浄による感染症対策ワーキンググループ」に、国内で唯一の企業として参画しています。当社のミッション実現への道のりは長いですが、県内外を問わず共感してくれる方々が集まりつつあります。すべての人が心身ともに健康に暮らせる社会を実現するために、この歩みを止めずに進み続けていきたいと思います。