開店から35年、
大在で愛され続ける“街角の中華屋さん”
大在駅から駅前通りを歩き、大在中央通りを右へ。のんびりと歩けば、道沿いに黄色い看板と赤いテントの店が見えてきます。ここが地元の人に愛され続ける大衆中華の『豚豚亭』。開店してはすぐに消えてゆく店も少なくないこの頃ですが、程よく色あせた入口上の赤いテントが、この店の長い歴史を静かに物語っているようです。
店内はカウンターとテーブルに小上がりという、食堂やラーメン屋さんと共通するレイアウト。「ウチは大衆中華だから、気軽に来てもらえるのが一番なんです」と話すのは、ご主人の田中孝勇さん。よく通る声と明るい表情。ご主人の気さくな雰囲気は、店の雰囲気そのもののようです。
店を開いたのは35年前。大阪から奥さんの故郷である大分に引っ越して来た時に、食文化の違いを感じたことがきっかけだったそうです。
「その頃の大分って、中華といえば高級な店ばかり。東京や大阪には街角に気軽な中華屋さんがあるんだけど、大分にはそんな店がなかったんですよ。だったら自分がやってみようかって」
そう話すご主人ですが、じつは当時の専門は西洋料理。「いやいや。料理学校で中華も勉強したし、スープを取ったりする基本は洋食も中華もそんなに違わないんですよ。ともかく自分が学んだ作り方を続けているだけ。だから全部、昔ながらの手作りです」と、明るく笑い飛ばします。
メニューの基本は、もちろん中華。トロリとしたあんがかかった「天津飯」や「エビのチリソース煮」など、高級店でしか食べられなかった味が気軽に食べられたわけですから、当時のお客さんが大喜びしたのはいうまでもありません。そこからお客さんとの長い付き合いが始まり「今では親・子・孫の3代で来てくれる常連さんもいるんですよ」と、ご主人が目を細めます。
一番人気の「中華定食」は、トリ天と酢豚が一度に味わえるというお得な定食。中華の定番「餃子」や「ヤキメシ」も、プロの技と手作り感が一体となった、ホッとする美味しさです。
「中華の店だけど『オムライス』とか『トンカツ定食』もチラッとはいっているんです。これはお客さんの要望というのもあるし、洋食を修行していた時の名残りでもあるかな」と、またニッコリ。
中華料理の確かな技術と、それだけに固執しない柔軟な味作り。そして何より、気さくな雰囲気。今日も『豚豚亭』のご主人は、訪れた人の顔を笑顔に変えるため、元気に鍋を振り続けています。
※メイン写真は「中華定食」800円