爽やかな春の季節があっという間に終わり、早くも梅雨入りのようです。
体調崩しやすい時期でもありますので、みなさんどうかご自愛ください。
大分トリニータは首位に立って以降、ハラハラ・ドキドキの試合を続けながらもなんとか踏ん張っています。先の長いシーズンですので、これから一山もふた山もあると思いますが、皆様のご声援をお願いしたいと思います。
サッカー界はまもなくワールドカップが始まろうとしているのに、全くと言っていいほど盛り上がっていませんね。不思議なくらいです。話題の中心は日本代表よりも超大物選手の破格な条件での来日移籍にあるようです。
他クラブの経営方針を論ずるつもりはありませんが、資金力にものを言わせて補強するやり方は、少なくともトリニータの方向性とは違うような気がします。
かといって、彼らの後塵を拝してもよいということではないと思っています。
ここで問われるのが「経営力」=「経営・フロントのプロ化」に向けた思考であり、チャレンジだと思っています。
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大分トリニータを一企業という観点で見れば、「従業員30~50人、売上10億円」という、ごくごく普通の中小企業です。
しかし、トリニータには「ごく普通の中小企業」にはない圧倒的なアドバンテージがあります。
それは「知名度の高さ」です。
中小企業経営者が自社の事業拡大に向けて最も苦労するのが「知名度・認知度=信用力」の向上です。販路拡大・資金調達・人材確保などあらゆる面においてネックとなるのがここだからです。
それをトリニータはすでに持ち合わせているのです。大分県民でなくても、サッカーを知らない人であっても、「Jリーグクラブの運営会社です」と言えば誰もがすぐにわかるのです。
この状況というのは、中小企業経営者にとっては垂涎の的ではないでしょうか。
この圧倒的なアドバンテージを活かして、成長企業の路線に乗せるために経営レベルで着手していることは大きく分けて3つです。
第一に「経営計画の策定」です。
当たり前と言えば当たり前ですが、単年・3年・5年といったスパンをもって経営計画を作り、それを毎年ロールオーバーしながら見直していくことが重要です。チーム状況・カテゴリー・財政状況などにより、どうしても「今できること」ばかり考えがちになりますが、やはり経営としてできることであれば10年後くらいまでは見通した計画を策定していきたいと考えています。
今はまだその緒に就いたばかりではありますが、まずは「中期経営計画」として3ヶ年計画を公表しました。今後はこの計画の実行と同時に、もう少し先の計画づくりに着手したいと思っています。
第二に「事業管理体制の確立」です。
簡単に言えば「PDCAサイクル」の確立です。設定した目標や行動計画の進捗を定期的にチェック・修正する習慣をつけることです。会議体のあり方、ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)のルールなどを仕組化していくことに取り組んでいます。それらを属人的にならないように「システム管理」していくことで「仕事の記録を残す」ことを進めています。
最初は「味気ない」「管理がきつくなった」と感じる人たちもいたと思いますが、もう少し時間をかけていけば、「やはりこの方が成果が出る」とわかってくれることだろうと期待しています。
そして第三は「人事制度改革」です。
目標を立てて、進捗をチェックしていく体制によりドライブをかけ、それらが自発・自律的に行われるようになっていくためには、やはり「シンプルでわかりやすい」「成果に基づいた評価と報酬がリンクする」制度にしていかないといけません。
そこで、これまで年一回の人事評価だったものを四半期評価にし、その都度、目標設定とフィードバック面談を実施するという体制に変更しました。今がちょうど、その最初のサイクルに入ったところです。
こうやって書いてしまえば、何も特別なことでないことがわかります。しかし、当たり前のことだからこそ、きちんと構築して、それが仕組となり風土化されるまでやり続けたいと思うのです。
この取り組みには「できた! 完成!!」はありません。永遠にブラッシュ・アップしつづけるのが、「経営のプロ化」の初めの一歩だと思っています。
これまでご苦労されてきた人が築いた「知名度・信用力」を、次の世代には一層大きな形でつないでいくのが、経営者の使命だと思っています。
私は先輩経営者や投資家の方々から「魅力的で実現可能、そして挑戦・応援したくなるビジョンを描きなさい」と教えられました。
若手の社員からも「もっとワクワクするようなビジョンを示してください」と要望されました。
それを受けて、リクルートやパソナといった大企業と、どのように差別化しながら道筋をつければいいのか考え続けました。知名度のない中小企業がどれほど苦労するか、嫌というほど思い知らされてきました。大分トリニータでは、それがない分だけ、本当に恵まれていると思っています。
その環境に胡坐をかくことなく、「もっと上を、もっと大きく、日本から世界へ」くらいの勢いを持てるような経営に一歩でも近づけていきたいと思っています。
次回は「経営・フロントのプロ化③」として「スタッフのプロ化・組織のプロ化」に触れたいと思います。