開幕して7試合を4勝2分け1敗。この数字をどう見るかについては意見の分かれるところかもしれません。長いシーズンですから、フロントは一喜一憂することなく、クラブ経営基盤の強化に集中すべきであると思っています。
しかし、開幕戦含めホーム3試合の入場者数合計が、昨年を下回っていると言うことは、この場を借りてみなさんにお伝えしておかねばなりません。
我々の努力不足の面は必ず改善いたします。その上で、ぜひ皆様にも大銀ドームに足を運んでいただきたいと思います。
大分トリニータを支えるのはやはり県民の皆さまであると確信しています。どうぞよろしくお願いします。

さて、本題です。
前回からの継続で、私が新卒・中途問わず新入社員に語り続けてきたのが「ビジネスマンたるものプロであれ」ということです。これは私の「働き方」の原点・哲学です。
私は社員へのメッセージを以下のように始めていました。

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私が「社員にはプロであって欲しい」とあえて口にする理由は何か。
それは、多くの人が「会社員」=「サラリーマン」の図式でとらえていて、スポーツ選手や著名な芸能人・作家などとは「違う」と考えていると感じるからだ。まずはその考えを捨ててもらいたい。
組織に属し、その組織の目標実現のために仕事をし、その対価として報酬を得る以上、その人はすでに立派なプロとしての扱いを受けると言うことを自覚して欲しい。
したがって、新卒社員であっても、今日この日からプロなのであり、異業種種からの転職者であっても当然のことながらプロとみなして接していくと言うことを忘れないで欲しい。
私は「プロに必要な要件」として以下の4点を重要視する。

  • ・いつでも
  • ・どんなことでも
  • ・期待される水準以上の成果を
  • ・継続的に出す

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ここまで聞くと、大半の社員は「何と厳しいことを言うのか」「めちゃくちゃな要求する人だな」と怖がってしまっていたような気もします(笑)。
しかし、「人の成長は上司の要望性しだい」と確信していましたし、「鉄は熱いうちに打て」の言葉があるように、最初に私の考えを明確に伝えることが最も重要であると考えていたので、躊躇うことなく話していました。
上記の4点について、私のこだわりを以下のように語っていました。

■「いつでも」の意味
私は四六時中ハイ・テンションで集中力高く、がむしゃらに仕事をしてほしいというつもりは毛頭ない。誰しも体調が悪い日もあるし、モチベーションが上がったり下がったりするものだ。だからこそ、「モチベーションは自分でコントロールしろ」、もっと言うならば「モチベーションで仕事をするな」と言いたい。
モチベーションが高いか低いかは、お客様・周囲の人には関係ないのだ。仕事の成果やクオリティがモチベーションに左右されていいはずがない。Jリーグの試合を観戦に行って、試合後のインタビューで選手が「今日はモチベーションが上がらなかったから、上手くいきませんでした…」なんて答えたら、その選手は2度とピッチに立てないだろう。
モチベーションは周囲に左右されやすいがゆえに、言いわけにもしやすい。それはまさにアマチュアの典型なのである。

■「どんなことでも」の意味
誤解してもらいたくない。私はあなたが何でもできるスーパーマンなどと思ってはいない(笑)。「何ができて、何ができないかをはっきりして欲しい、それを自覚し公言しろ」ということだ。
イチロー選手はなぜ素晴らしいのか。彼は自分の口ではっきり言っている。「僕は打てると思うボールしか打たない」と。つまり彼の素晴らしさは「打てないボール」に手を出さないという技術なのだ。仕事も同じことだ。仕事のできる人ほど「自分のできること・得意なこと」で勝負している。できないこと・苦手なことは上手く人を使いながら結果を出していく。それに対して、仕事ができない人ほど、全部一人でやろうとし、抱え込み、パンクするか納期を守れないか、最終的に多くの人に迷惑をかける。「責任感が強くって…」と、きれいごとで済ませてはいけない。プロが追求すべきは課題へのパフォーマンスであって、自分のメンツではないのだ。

■「期待される水準以上の成果を」の意味
みなさんに問いたい。「あなた自身は期待される人になりたいですか? それとも期待されない人でいいですか?」。
答えは明白だと思います。もし万が一「自分はあまり期待されたくない」と思っている人がこの場にいれば、それは採用ミスだから即刻この場を出て行ってもらってもかまわない。(実はこの質問で、「私あまり期待されたくないんです」と後から告白してきた人がいた…苦笑)
期待されることを重荷に感じる人は自分の成長にふたをする。「もっと、もっと」と言われることを自ら避ける。しかし、一方でお客様の要求は常に「高く」なり続ける。
「これでよし」と思った瞬間に、お客様の満足度は下がり、いつの間にか逃げていく。自ら周囲の期待値を上げる努力をする。そしてその期待値を上回る結果を出す。それがプロの姿勢なのである。そこに自己成長がある。

■「継続して出す」の意味
仕事において重要なのは「再現性」である。仮に素晴らしい結果が「たまたま偶然」であったとしても、それを何とか次もできるように、振り返ったり要因を分析したりするのが肝要だ。
成功の理由を恥ずかしがらずに口にしろ。自慢しなくていいから、他人にもアドバイスしてみろ。そうするともっと自分の実力はあがっていく。その結果、よい成果が継続して出るようになってくる。成功して舞い上がって、振り返りを怠ると、「やっぱりあれは偶然だったな」と周囲は思い、評価も期待も下がる。こんなはずじゃないと試行錯誤に迷い込んでさらにドツボにはまってしまう。
「継続した成果を出す」ことができるのは、反復・反復を厭わずできる真のプロなのである。
女子プロゴルファーの不動裕理選手が、6年連続賞金女王に輝いたときのメッセージがある。
「練習が仕事です。社会で働いている人たちは皆1日8時間くらいは働いている。だから私はプロゴルファーとして毎日8時間以上練習するのが当たり前、それが仕事だと思っている」と語っている。

当時は1年間に50回以上の会社説明会、それと同じくらいの入社時研修をやっていました。
それに加えて毎朝ブログを書いていました。また社員総会、キックオフ、月次・四半期の部会など、あらゆる場面で同じような話をし続けていたように思います。
それが会社の理念や風土になっていったこと、そこで頑張っていた人たちが今もそのことを懐かしそうに話してくれたりすることは私の誇りであり、バックボーンになっていると言っても過言ではないと思います。

次回からは、いよいよトリニータについてふれてみたいと思います。

profile

神村 昌志 氏
(かみむら・まさし)
株式会社大分フットボールクラブ経営改革本部長。
1962年、愛知県半田市生まれ。大阪大学文学部卒業後、1985年に株式会社リクルート入社。2年目よりリクルートUSAへ出向。ロサンゼルスに駐在。外資系企業を経てJAC Japan(現・JAC Recruitment)入社。2003年に代表取締役に就任し、2006年JASDAQ上場を果たす。2008年10月より株式会社アイ・アム代表取締役社長を経て、2012年3月より株式会社アイ・アム&インターワークス代表取締役会長。2015年にはJリーグが設立したプロスポーツの経営人材を養成するビジネス講座「Jリーグヒューマンキャピタル(現・一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル・略称「SHC」)」一期生へ。2016年より現職。趣味はサッカー、ゴルフ、落語、講談、ワイン、読書。アマチュア講談師として年に数回高座にも上がっている。
■大分トリニータ(株式会社大分フットボールクラブ)
http://www.oita-trinita.co.jp
■一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル
http://shc-japan.or.jp