出張先のTVで別大マラソンを見ながらこの原稿を書いています。
別府湾を見渡す国道10号線を北上・南下し、産業道路から市営陸上競技場へというコースが、日々見慣れた景色なっていることに不思議な感覚を覚えます。
すでにご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、年明けから「大分トリニータ東京事務所」を開設しました。クラブの経営基盤強化・確立と、首都圏在住の大分に縁のある方々に、より一層トリニータの応援・支援の輪を広げていくための取り組みです。
先日、前職の部下で大分出身の男性がわざわざ事務所を訪ねてきてくれました。近々に高校時代の同級生たちと飲み会があるそうで、旧友たちにお知らせしてくれるとのことでした。
2年前には縁もゆかりもなかった大分という土地・風景が日常になり、しばらく会っていなかった昔の部下に再会するという、文字通り「目に見えぬ繋がり・運命」みたいなものを感じると同時に、私のような外者にいろいろな機会を与えてくれている皆様に少しでもお役に立ちたいと、思いを新たにする次第です。
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■あらゆる組織に通ずること
さて、ここまでの3回を読み返していると、えらく長い「若き日の思い出話」的な感じがしてきます(笑)。日経新聞の「私の履歴書」でも1か月で終わるものが、延々と1年も続いては読まれる方にも申し訳ないので、一気に時計の針を回して、今現在私が考える「組織論・人材論」に触れたいと思います。
大きなテーマで言えば、「組織の強い・弱いには共通の理由がある」ということです。
ここでいう「強い組織」とは、大きな組織という意味ではなく「成長する組織」のことを指します。
私は、リクルートを退職後は外資系企業(社員数20~50名)にマネジャー・管理職として転職しましたが、わずか3年で2社を転々としました。そのうちの1社は現在日本で最大の国際産業見本市主催会社として成長を遂げていますが、もう一つの会社はすでに日本から撤退しています。
その後、就職した会社はさらに小さく、私が入社した時点では社員数が15名程度の人材紹介会社でした。私はこの会社で社長を務めることになり、当時の社員の頑張りもあってジャスダック上場、社員700名、業界3位にまで成長することができました。
そこからは設立4年目のベンチャー人材紹介(約50名)、子会社化した採用アウトソーシング会社(約60名)の2社で社長を務めましたが、この2社はいずれも就任当時実質的な赤字でした。このうちの1社はマザーズに上場できましたが、もう1社はそれほど劇的な変化を遂げていません。
そして、現在携わらせていただいている大分フットボールクラブ(約50名)の経営状況に関しては皆様ご存知の通りです。
■議論する組織
このように、私は30歳でリクルートを退職後の25年間を、中小・零細企業の経営者・管理職として携わってきました。そして、いくつかの成功とたくさんの失敗を経験しながら、「強い組織・弱い組織、伸びる組織・消える組織」の共通点がみえてきたのです。
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<強い組織・成長する組織> ⇔ <弱い組織・消える組織>
トップの成長志向が明確である ⇔ 成長に対して「そこそこ」で、かつ曖昧である
人材に投資する ⇔ 社員の給料を安く抑えようとする
「頭」をハードに使って働く ⇔ 労働時間がやたら長い
各社員にやりたいこと(夢)がある ⇔ 仕事がお金・生活のためになっている
公的性を重視する ⇔ 事業目的が明確なようで明確でない
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どのビジネス書にも書かれているような極めて当たり前のこと項目ばかりです。
もちろん、この項目一つ一つについて掘り下げることは重要なのですが、私が伝えたいのはその解説ではありません。
その本質は、「これらをテーマとして組織・人材論を経営者が幹部・社員と日々喧々諤々と話す習慣があるかないか」ということなのです。
中小企業であっても、経営者が幹部や社員にこのテーマで常に議論が起きるように経営の工夫をしていれば会社は伸びるし、そこで働く社員は成長します。
逆に、大企業であっても、組織内でこの習慣のない企業とそこに集う人は、社内では通用するかもしれないけれど、いったん外に出たら全く通用しないと言うことになってしまうのです。
私は新しい組織に着任すると、まずそこに注目します。経営者が「組織や人の変化・成長にどの程度本気で取組んでいるか」を示すバロメーターが上記の5項目であり、議論する習慣なのです。
それを見れば、その時点での組織課題(病の症状)が分かりますし、組織の持つポテンシャルもある程度想定がつくのです。
そしてそれは、1か月も経たないうちに、おおよそのことはわかります。内情に詳しくなる前に、直感で判断できることが後々になって、大きく外れることはないのです。
次回は、少し赤裸々な事例をあげて「組織が強く・成長し続けるための条件」を示していきたいと思います。