しゃべるより文字。電話よりメール。

前回、モバイルネイティブたちのコミュニケーションのかたちとして、このように変化してきていることをご紹介しました。

しかし、最近は、メールという概念さえなくなっていき、ライン(LINE)やフェイスブック(Facebook)、ツイッター(Twitter)のダイレクトメッセージでのやりとりが普通になっていることさえあります。これらは主にSNS、ソーシャルネットワークサービスの付随機能ではあるのですが、SNSを使い慣れた人たちにとってはむしろこちらのほうが使いやすいわけです。

それはなぜでしょうか。メールとメッセージはどう違うのでしょうか?

まず、挙げられるのが即時性。とにかく携帯電話のショートメールのようにダイレクトにスマートフォンにメッセージが飛び込んでくる。

というのも最近、過半数を超えるほとんどの人がSNSをスマートフォンで利用しています。だからこそ、それらを利用したメッセージサービスもスマートフォンで受け取ることになり、相手はメッセージが来たことがすぐにわかるのです。

スパムメールやさまざまな商用メールとともに送られてくるパソコンメールとは違って、“友達だけ”から送られてくるメッセージがいつでもどこでもスマートフォンに送られてくるので、利便性が高いのです。返信も手元ですぐにできます。

次に特徴として挙げられるのが文章の短さです。フェイスブックやラインは、ある程度の会話に耐えられる文字数制限、端末によって500文字から1万字までの文章を送ることができますが、スマートフォンで長文は打ちにくいですし、ツイッターに至っては140文字。簡単なあいさつくらいしか送ることができません。しかしそれがまた、リズムあるやり取りにつながるのです。

ここで、おや? っと思った人がいるかもしれません。というのも前回はリアルタイム・コミュニケーションが苦手だから電話よりメールとご紹介したわけですから。

実はここで逆転現象が起こっているのです。つまり、メールからメッセージに移った時点で、またリアルタイム性が強調されてきているのです。

ラインのメッセージ機能は“トーク”と呼ばれています。そう、“会話”です。会話はリアルタイムでおこなうもの。だからメッセージの本質は文字を使った会話なのです。しかもラインには「既読」という印が付きます。相手が自分のメッセージを読んだかどうかがわかるんですね。

だから、読んでもすぐに返事をしない人に対して、送った人は、“相手は読んでいるのに返事をよこさない、なぜなんだ?”という感情が、リアルタイムに芽生えるのです。メールなら鷹揚に構えていた人がラインではなぜか返事がないとイライラしてしまう。学生の間では“既読スルー”という言葉すら生まれています。読んだにもかかわらず返信しない人のことを指しているんですが、これがもとで社会問題化している現実もあります。学生間のいじめなどですね。

それほどにリアルタイム性を持ったメッセージ機能ですが、ディスカウントストアのドンキホーテでは、ラインを利用して売り上げ報告や会議をおこなっているそうです。その即時性を利用して、社長自ら幹部とコミュニケーションをとっている。さすがに経営トップからのメッセージに“既読スルー”は使えません(笑)。

考えようによっては若者だけのコミュニケーションとは言えないのがメッセージ機能。新しいコミュニケーションの方法も、若者だけではなく場合によっては、我々の経営戦略に利用できるツールにもなります。

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田代 真人 
(たしろ・まさと)

編集者・ジャーナリスト。(株)メディア・ナレッジ代表。駒沢女子大学、桜美林大学非常勤講師。1986年九州大学卒業後、朝日新聞社、学習研究社、ダイヤモンド社と活躍の場を変え、女性誌からビジネス誌まで幅広く取材・編集。著書に『電子書籍元年』(インプレスジャパン)、構成作に『もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら』(日経BP社)がある。