こたつdeポン!! 誕生秘話 #01
「こたつでポン!? その名前チョーダサくねっすか?」
最初の顔合わせ打ち合わせ会議で、20代半ばの若者から嘲るように言い放たれた。
4年前の2016年秋口、いまや大分ではそれなりに知られるようになった『こたつdeポン!!』(ガレリア竹町ドームで毎年12月30日に開催される極めてシュール且つトリッキーな参加自由の忘年会イベント)がまだ影も形もないとき、自分たちの手でなんとか街に賑わいを創りたいという熱い気持ちを持った街に関わる若者二人が僕のところに相談に来た。商店街とかの組織にも入っていないこともあり、二人の表情にはやりたくても糸口がつかめないもどかしさが滲み出ていた。
そのうちの一人、今をときめくIT関係のオーナーをしている女性と、その相談の二年くらい前に、とある商店街の事務局で立ち話しをしたことがあった。「商店街の路上で忘年会とかしてみたいんですよぉ」と言われたので、「あぁ、だったらいっそのこと竹町のドームに畳敷いてこたつを置いてとかどう?」と答えると「あーっ、面白いですねぇ!」とのやりとりで、そのときは終わった。
後日、帰宅途中にトキハ前のスクランブル交差点に面した中央町商店街のアーケードの下で青いビニールシートを敷いて若い人たちが賑やかに缶ビール?、缶チューハイ?を手に忘年会らしきことをやってる光景を目にした。「あー、あのとき言ってたヤツやな」と思うとともに、なんか中途半端でもったいないなぁ との印象も拭えなかった。
そして今回の相談であった。
「畳を敷いてこたつに入って宴会をするって言うようなイベントのこと、前に話してもらったことがありましたよね。ああいうとことん突き抜けたのを今度本当にやってみたいんです!」との熱い思いを告げられた。
実は僕自身、そういうイベントを自分の手で前からやってみたかったんだけど、僕が所属するのは府内町の商店街、ガレリアドームは中央通りの向こう岸の竹町の広場ということ等もあり、商店街という枠があるような括りでは却って取り組みにくいなぁ、どうしたもんかなぁ…と考えあぐねていた時でもあった。
そのとき僕は思った。
「こりゃお互いにとって、そして街にとってもチャンスだわ」
もちろん躊躇なく、即了解。
すぐに商店街関係の(比較的)若手の有志と、街に関わる若者有志が集まり、キックオフミーティングをする運びとなった。商店街側は主に府内町関係者や芸術文化の関係者、そして若者チームの方はIT関係・飲食や小売りのオーナーなど、まさしく街にしがらみの無い、実にバラエティな面々。
そして、その時のイベントタイトルを話し合ってるときのやりとりが冒頭の言葉「ダサくないっすか?」である。この野郎(笑)。
先ずは当初のやりとりの通り、ガレリア竹町ドームに畳を敷いて、こたつを置いて、飲み会をやることは決まったわけであるが、そもそも畳のアテも、こたつのアテも全くなく、はてさてどうしたもんかという、まぁ誠にもって無鉄砲な船出であった。
でも、なんとかなるもんである。
僕の高校の同窓会の懇親会で、たまたま隣に座った女性の先輩と話していて、「今度こんなイベントやる予定なんですよー。でも畳をどうにかして手配しないといけないんですけどねー」てなこと話したら、なんとその先輩の実家が畳屋さんで張り替えた後の廃棄する古い畳を配送用のトラック込みで無償で貸してくれることになった。言ってみるもんだ(笑)。
さぁ、次はこたつである。買う金なんか無い。
「これはもう個人レベルで借りるしか無い」と、メンバー各々が友人知人にあたったり、SNSで呼びかけたり、必死の取り組みが形となり、なんとか50台近く集めることができた。いろんなイベントでいつも一緒に汗を掻いてくれる大分市役所の職員さん達も10台以上集めてくれて、これは本当に嬉しかった。
「さぁて、なんとか形になってきたぞー」と思ってはみたものの、もう一つ致命的なハードルが残っていた。
こたつの電源である。50台のこたつの電源を会場から取ると一発でブレーカーが落ちるのは明白だし、そもそも圧倒的にオーバーキャパである。
そこで僕は考えた。そもそもが壮大なシャレのようなイベントなんだから、こたつの暖を取るのもシャレにしてしまおうと。
なんと百均で売ってる洗濯物を入れる編目のネットに「使い捨てカイロ」を数十個入れて揉んで発熱させ、各こたつの中に投入する、という実用新案でも取れるんではないかとも思えるほど(?)の方法を編み出したのである。というか、それしかなかった(笑)。
これが予想以上に暖かく、またそのバカバカしさも受け、極めて好評。イベントが終わった後も、まだ温かいカイロは街を歩く人に配り、二次的に利用してもらうという循環型の「たまたま後付け的に」非常に社会性の高いものになっている。
また、このイベントは参加自由ではあるが、参加するためにはひとつ「掟」がある。
食べ物と飲み物は持ち込み自由。ただしその飲食物は、どこでもよいので街なかのお店で買ってもらい、そのレシートが入場ゲートでの入場券代わりとなるのである。要は中心街の消費にも貢献しようというポジティヴなあざとさも併せ持つのである。