「レガシー」とか「シビックプライド」って絵空ごと? #01
「一体何時間バスに乗せたままにするつもりかえ?」
ラグビーワールドカップ2020大分会場での初戦、昭和電工ドームで行われた彼のオールブラックスことニュージーランド代表対カナダ代表の試合を堪能し、両チームの「お辞儀」セレモニーまでしっかり見届けてから乗り込んだ大分駅南行きのシャトルバス。
ところがスタジアムを出て到着するまでなんと3時間弱。しかもほぼ終点のホルトホールまで着いてるのに停車したまま約30分。バスから降りた頃には試合の興奮は冷めきっていた。他のバスでは怒号が飛び交ったり、運転手さんに掛け合って強引に途中下車する人もいたらしい。僕はこのRWC大分開催の先行きについてひたすら暗澹たる気持ちになった。
街に到着するのが深夜近くになったため、観光客は着いたら宿に一目散。試合開始が遅めだったことを加味しても、夜の経済効果は期待外れどころかゼロに等しく、「ビールが6倍売れる!」 なんて言われていたことも夢のまた夢と思わざるを得なかった。早速SNSでもこのネガティヴな話題が持ちきりとなった。
しかし…ここから「チーム大分」 の大巻き返しが始まった。行政の関係者や一部の議員さんはSNSの情報を素早くキャッチ、情報の早さというツールの特性のみならず情報の確実性も斟酌しながら活かし、即座の改善に全速力で取り組みを始めたのである。警察も信号の間隔の調整をすぐに対応したと聞いた。
僕はその後の予選2試合も観戦したのだが、シャトルの改善具合を確認したいということもあり、一戦目と全く同じルーチンで帰った。すると二戦目は約1時間早く、三戦目は1時間半早くと、なんと半分の時間に短縮されたのである。当然のことながら試合後の夜の街なかは早く帰り着いた多くの観戦客も繰り出し、大賑わいだったことはいろんな報道で皆さんもご存じの通りである。
今回のワールドカップのおもてなしゾーンとしては、駅の南側に公式ファンゾーンがあり、主に県が担当。北側はこの機に完成した駅前の「祝祭の広場」を中心とした街全体をゾーンとして市が担当。僕は商店街関係者代表として市が担当する北側のゾーンのイベント検討部会の座長を拝命して、約一年近くあーじゃねーこーじゃねー喧々諤々…とまではいかないができる限りの論を尽くした。大体行政に呼ばれての会での座長なんてお飾り的なものが相場だけど、お飾り座長なんてまっぴらゴメンな僕は目一杯入り込んでいった。(それが行政にとってありがたかったかどうかは全く別ですが(笑))
そしてその会議でまず最初に会の委員や行政のスタッフの前で掲げた言葉は、『打倒公式ファンゾーン!』であった。これは県の担当者も出席する全体会議でも、怯むことなく堂々と宣言した。僕は民間人だし。
もちろん公式ファンゾーンを打ち負かしたいだとか、県に喧嘩を売りたいだとかではまったくない。このワールドカップは大分市中心地の駅南だけ盛り上がっても北側だけ盛り上がってもダメ、全体が面となって来訪者をお迎えし、おもてなしをする態勢があって初めて街の成功へと向かえるのだという強い思いのみだった。ただ、南側は確固とした公式ファンゾーンが控えるのに対し、北側のメインとなるであろう「祝祭の広場」の効果も全く未知数だった。とにかくこちらは突き抜けるくらいのモチベーションが必要であり、ある意味行き過ぎくらいのスローガンを掲げるべきだと思ったのである。