テレビドラマ『半沢直樹』で、父親が銀行の担当者に土下座するシーンと、その後の不幸な結末が話題を呼びました。
このシーンをみるたびに、「近くに中小企業診断士はいないのか」「この町にも商工会か商工会議所があるはず」「そこに駆け込めば良いのに」と思いました。
日本には、中小企業基本法という法律があり、その中で中小企業は「我が国経済の活力の源泉」と位置付けられており、「独立した中小企業の多様で活力ある成長発展」のために、金融、税制、経営革新、創業支援、研究開発支援など多種多様な中小企業対策が用意されているのです。そもそも、この国の企業の99%は中小企業であり、だからこそ、これらの施策を活用するのに遠慮は要らないのです。
中小企業診断士制度も中小企業対策のひとつです。私がこの資格試験に挑戦している時には、中小企業庁が毎年発表する中小企業白書のほとんどを読みました。中小企業の実態を良く把握していますし、政策もそんなにぶれていないと思っています。
◎近くの商工会、商工会議所へ行こう
中小企業庁の小規模企業対策事業のひとつに、商工会、商工会議所の設置があります。
大分県内には17の商工会と10の商工会議所があります。町の中心部に「商工会館」と呼ばれる建物があると思いますが、そこが商工会、商工会議所の事務所です。
事務所には「経営指導員」と呼ばれる人がいて、毎日地元の中小、零細企業のために駆け回っています。地域産品開発の裏には、必ずといっていいほど経営指導員の働きがあるのです。「〇〇まつり」など地域のイベントを陰で支えているのも彼らです。難関な採用試験に合格し、たえず研修を受け、いつも企業のそばにいます。だからこそ、中小零細企業の実態を熟知しているのです。
会員制度で成り立っており、会費は年間で数千円程度。中小企業であれば、気軽に入会できる程度の金額です。しかし企業によっては、この会費も払えなくなる時があります。私はよく経営指導員さんと経営改善支援などで同行するのですが、「ここはずっと会費が未納です」という声をときたま聞きます(本当に困った時には会費は未納でも相談して欲しいのですが)。そこで私は言います。
「経営指導員さんはあなたの味方になることを仕事にしている方々です。長いおつきあいをして下さい」
そのそばで経営指導員が、小さな声で「今年の分だけでもお支払いいただければ」と言ってましたが(笑)。
◎金融機関を味方につけよう
私は金融機関の方とも取引先の企業支援に行くことがあります。彼等は取引先の経営数字をよく把握しており、経営改善計画の作成から、必要なら取引先探し、なかには倉庫の整理まで一緒にやる方もいらっしゃいます。取引先が儲かってこその金融機関であり、まさに一蓮托生です。
国は平成24年から商工会、商工会議所に加えて、金融機関も支援機関として認定し、中小企業の支援に当たる仕組みを作りました。最近は支援機関向けの研修会に金融機関職員の参加が目立ちます。きっとあなたの担当も、姿勢が少し変わっているはず。
だからこそ、「近くの信金(しんきん)と親近(しんきん)なおつきあい。」をおすすめします。もちろん信用組合、地方銀行も同様です。メインバンクを決めたら、良い時も悪い時も情報交換を。金融機関側も借りていただいてこその立場。あなたの行動に敏感なはずです。そうすれば、半沢直樹氏の父親のような事態には、恐らくならないでしょう。
中小企業基本法の理念からすれば、「企業は経営者のものであると同時に、地域、従業員そして顧客のもの」です。もし一生懸命努力して行き詰まる事があったら、恥ずかしがることはありません。近くの商工会、商工会議所、取引先金融機関、そして中小企業診断士に相談して欲しい。中小企業経営の専門家を味方に付けて、一緒に原因を探り、対策を考え、ひとつひとつ辛抱強くやって行くことです。私はそうやって再生、復活していく企業の現場をたくさん見てきました。