地元を愛する店が提供するオンリーワンのペアリング事業
2019年6月、宇佐市安心院町に和食料理店が開業しました。店名は「由布院 その田」。格子状の木材を使った外観と、白い無垢材の扉が上品なしつらえを感じさせる同店の園田勝也代表に、店名の由来を聞いてみました。
「私自身は由布院生まれですが、祖母は安心院の出身。祖父の代から玖珠で椎茸栽培を続けていまして、距離も近い安心院に物件があると聞いて開店を決心しました。屋号に由布院を冠したのは、自然の恵みがあふれ、かつての由布院のように静かで上品な雰囲気がある安心院に共通の魅力を感じたからです」
園田代表は愛知県で製造業に従事した後に帰郷、由布院温泉の名旅館・亀の井別荘の食事処「湯の岳庵」で皿洗いのアルバイトを始めます。そこから料理の世界へのめり込み、本格的に修行を開始。同宿の厨房に約20年間立ち、最後の5年間は料理長を務めました。
「山菜、地野菜、川魚、肉料理など季節に応じた旬の食材にこだわった料理を提供しています。落ち着いた雰囲気のなかで、特別な人と、特別な時間を過ごせる店づくりを心がけています」
漫画『美味しんぼ』にも登場し、多くの食通をうならせてきた彼の料理の腕前は誰もが認めるところ。「黒毛和牛丼」「天麩羅御膳」と二枚看板のランチ、予約のみの特別ディナー、いずれも料理と真摯に向き合う姿勢が伝わってくる逸品になっており、その評判は地元・安心院から周辺地域まで次第に広がっています。また本業とは別に「こども食堂」にも料理を提供している園田代表の人柄も、ファン層を広げているようです。
しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により同店も頭を悩ますことになります。著しく売上が落ち込んだ状況を打開するため、地元酒造メーカーと連携したテイクアウト企画「安心院樽抜きワインONLINEの輪」、同店の味を家庭で楽しんでもらう「大人の家呑みセット」の提供等、様々な策を講じました。
そして新たに取り組みを開始したのが、ペアリング事業です。ペアリングとは、お酒と料理の相性を活かし、美味しく食事を楽しむスタイルを指します。由布院その田では、たとえば「誕生日にもらったお酒」「結婚記念日に用意したお酒」といった具合に思い入れのあるお酒を持ち込みOKとして、その銘柄に応じた料理を提供するというもの。お酒と料理、それぞれの特性を知り尽くした園田代表だからこそできるサービスです。持ち込み酒対応のペアリング事業は県内初の試みでもあり、新たな客層の開拓にも繋げられそうです。
「もちろん店内の感染防止対策は万全を期しています。この機会にぜひ当店の料理を楽しみに安心院まで足を運んでいただきたいです」
まさに“特別な人と、特別な時間を過ごせる”ことが期待されそうです。