大分産食材の魅力を届けるため
〝地産外消〟を意識した事業展開も
 大分市弁天の中央卸売市場近くに本社を構える株式会社山英食品は、業務用食品の卸売業を営む地元業者です。良質な海の幸、山の幸があり、“食材の宝庫”とも称される大分ですが、県内はもちろん国内外の食品メーカーや商社との取引も行っており、コロナ禍で深刻な打撃を受けた宿泊施設や飲食業界にとって、重要な役割を担っています。
2022年12月に同社の3代目代表に就任した林田洋介代表取締役は、食材の配送だけにとどまることなく、代表就任前から新商品の情報や価値あるサービスの提案を心がけてきました。
そのひとつの取り組みが、“食と地域を繋ぐ”をテーマに掲げ、2018年に設置した地域産業課です。設立のきっかけは、店主の高齢に伴い引退を考えていた取引先『別府ちこ堂』が手がけていた加工食品の製造販売事業を、山英食品で承継したことに始まります。
「大分県産の椎茸を使った佃煮である『椎茸こんぶ』『椎茸からし』『椎茸味噌からし』の3品は、当社にとっても人気の商品でした。この味を無くすのはもったいないと思い、大分県事業承継・引継ぎ支援センターのサポートを仰ぎながら事業を引き継ぐことにしました」(林田洋介代表取締役)
本格的な食品加工は初めてだったこともあり、味とブランドを承継するにあたり約3ヶ月にわたって製造方法の指導を受け、無事にその味を再現するに至ったといいます。
地域産業課では生産者や製造者が提供している食材と、料理店や販売店のニーズを整理しなおし、マッチングの機会を探っています。地域からの要望に応えて、災害時に備えた備蓄用食材や防災用品の販売もスタートしました。
新商品の自社開発にも、余念がありません。まもなく販売を開始する商品が、椎茸と並んで大分の名産品として知られるカボスを使った急速冷凍カット果実『トキカボス』です。
「事業再構築補助金を活用して導入した液体急速凍結機により、カットした大分県産カボスを真空パックして一気に凍らせたものです。旬の新鮮カボスが一年中、美味しく味わえるので、新しい楽しみ方も可能になってきます」
 『トキカボス』は既に商標登録も済ませ、ネット販売も含めて新たな販路開拓の戦略商品として位置付けられています。
「大分には全国に自慢できる美味しい食材が豊富にあります。観光で大分を訪れた方にも、その魅力を知ってもらいたいですね。そういう意味では“地産地消”を超え、首都圏や県外の皆さん、さらには海外も含めた“地産外消”を考慮したマーケティングも展開していきたい」
生産者のこだわりや背景を含め、地元食材の魅力を熟知し、幅広いネットワークを有している同社だからこそできる取り組みとして期待されています。

profile

株式会社 山英食品
(大分中央支部会員)
代表取締役 林田 洋介氏
【株式会社 山英食品】
大分県大分市弁天1-6-30
※地図
tel:097-535-0558
URL https://www.yamaei-foods.jp