「環境保全」をテーマに開発を続けた結果、大分県ビジネスグランプリ優秀賞を受賞
株式会社三州コンクリート工業の後藤譲代表取締役は、かつて豊後高田市の土木技術者でした。現場を経験した際に抱いた問題意 識を反映させ、社団法人発明協会から発明奨励賞の受賞実績が2度もあります。
「並石ダム等の土木工事を担当した当時から各種工法への研究に取り組んできました。会社設立後も研究を続け、これまで“住みよ い環境を実現”という考えで製品を開発してきました」
まず受賞の対象となったのは、『OSB(大型スライド式ブロック)』と名付けられた擁壁ブロック工法と、オールネイチャーロ ック『A・N・R(環境保全型多自然型ブロック)』です。
『OSB』は、使用する二次製品の量を減らし、工事現場で組み立てる方式の擁壁ブロック。ブロックの重さが軽いわりに、表面 積が2.0平方メートルと大型のため現場内の作業効率がよく、運搬も容易、工期も短縮できるというメリットを持っています。道 路・宅地造成・公園などの土留擁壁工事や砂防治山の山腹工事などに利用されていますが、環境や風土の美観を考慮して、ブロック の表面を「みだれ石積」という和風模様にした点に、同社のこだわりが見えます。
『A・N・R』も環境保全型製品として話題を呼んでいます。自然石を全ポーラスコンクリートで剛結させることで透水性に富ん でおり、背面の水を通すことからバクテリアが発生、草や苔が水質浄化を促進させるという特徴を持っています。さらに日本文理大 学との連携事業でポーラスコンクリートに竹炭を含有させることに成功。これで水質浄化率が向上し、ホタルが生息できるまでの環 境レベルを目ざした、自然環境になじんだブロックとなっています。
そして平成21年、第六回大分県ビジネスグランプリの優秀賞を受賞したのが、海岸工事での磯焼け(プランクトン不足)現象の改 善を目的に開発された『たいたい』(魚礁ブロック)です。
『たいたい』は、海水の浄化が可能なポーラスコンクリートで自然石を固め、海水が自由に出入りするような構造になっています 。「波返し」工法を導入することでブロックの安定化を図り、またこれが海中に沈澱している亜硝酸窒素、有機リン酸等の有機物の 光合成を活性化、プランクトンの発生を促進します。さらに浄化力が大きい竹炭粉と、魚が好む酸化鉄を混入させ、防波堤全域にア ワビ・サザエなどの付着動物・藻類・魚類が集まる構造に仕上げています。また、水深10~20m、陸地より3~5kmと、従来品より比較 的浅い海中に沈めるため、コスト的にも安く設置できます。
『たいたい』の研究開発にあたり、香々地港沖に3基を沈め、魚類や水生植物の生育状況を観察してきました。同社では、今回の優 秀賞から得た補助金でさらに15基を加えて研究を重ね、完成度を高めています。国の認可が得られ、公共事業に使える魚礁となる日 もいよいよ間近に迫ってきているようです。
「海水を浄化させる機能を持った魚礁は、これまで開発されてきませんでした。海の汚染が進んでいる危機的状況が迫っている現在 、『たいたい』はきっと役立つ製品になると信じています」
環境保全製品の開発に傾ける後藤社長の情熱は、ますます輝きを増してきています。