再生可能エネルギー普及に向け温泉発電による新たなビジネスモデル
地球環境に対して負荷の少ない再生可能エネルギーによる発電設備が、ここ数年で続々と運転を開始しています。資源エネルギー庁の発表によりますと、固定価格買取制度が始まった2012年7月以降、その発電量は順次増加してきており、2013年11月末時点で、年間の発電量が電力会社10社の総販売量の10%を超える規模になってきたそうです。その4割が太陽光発電によるものですが、「日本一のおんせん県」である我が大分県で注目されているのが地熱発電、いわゆる温泉発電です。
温泉発電による電気は比較的高価で売却でき、天候に左右される風力や太陽光に比べて安定して発電できるというメリットがあります。国内初の地熱発電を1925年に成功させた別府は温泉発電の先進地であり、脱原発につながる新たなビジネスモデルへの期待が高まっていました。
別府市堀田で電気工事業を営む株式会社小俣電設工業の小俣勝廣 代表取締役は長年、電設工事とともに温泉の噴気関連工事を手がけてきており、別府に眠る未利用泉源の土地を借りて発電設備を設置して売電利益を得るビジネスモデルを発案。温泉発電の関連技術やノウハウを持つ県内外の企業4社で、2013年4月に西日本地熱発電株式会社を設立したのです。
「温泉工事に携わって一番感じる事は、熱源を100%利用していないこと。余った噴気をそのまま逃がすのはもったいないので、これを発電に使えればと思ったのです。熱源をレンタルしていただくお客様には、当社が採用しているマイクロバイナリ発電機の設備導入工事やメンテナンス費用など一切負担をかけず、噴気レンタル料金が入って来るという仕組みです」
2014年1月に当システムを導入して売電を開始した貸切家族風呂・五湯苑(別府市大字南立石1494-1)に足を運んでみると、125度の蒸気が噴出するなか順調に稼働している地熱発電所の姿が目に入ってきました。当発電所では送電端出力60kWを2台設置しているそうです。
「減価償却期間は15年となっていますが、実際は10年以内に償却できると予測しており、システムも順次改善していく計画です。これまで無駄に捨てていた温泉エネルギーを、有効に活用していきたい」
この夏、別府市湯山地区にも、あらたな発電所が稼働開始予定という同社は、3年間で県外も含め約30基の設置を計画しているそうです。日本一の湧出量を誇る別府温泉にとって、まさに“地産地消”ともいえる温泉発電。別府生まれの温泉発電ビジネスモデルに、期待が高まります。