地域を盛り上げる裏方として誇りをもって仕事にのぞむ
日本一の温泉を擁する別府には、温泉町ならではの様々な文化が市民に根付いています。単に入浴を楽しむだけでなく、地域のお祭りや舞台芸能などの娯楽を楽しむ文化も、そのひとつかもしれません。
その別府市を本拠地に事業を展開する有限会社九州舞台総合美術は、舞台・照明・音響・映像・美術等で各種のイベントやステージを支える業者としては、大分県内でもっとも歴史がある会社です。
もともと川口市民会館(埼玉県)やテアトル電装(東京都)、歌舞伎座(同)等の舞台照明技師として一流の腕を磨いてきた創業者の中村正徳会長が、縁あって長崎に拠点を移し、その後、別府市へ転居したことから同社の歴史が始まります。一時はアクセサリー等の販売も手がけていましたが、別府市北浜の料飲ビルで営業していたキャバレーの舞台で音響照明が必要となり、再びこの業界へ復帰。その後、ラクテンチや大型ホテルの舞台も手がけることで、順次事業を拡大していきました。
「法人を設立した1977年は僕が中学3年の時でした。当時の別府の夜は九州のどこにも負けない賑やかさで、生バンドを抱えるキャバレーが4店舗もあって、有名歌手のステージも多数ありました」
こう話すのは、現社長の中村忠孝代表取締役。東京でテレビスタッフを養成する専門学校を卒業した中村忠孝代表取締役は、全国キー局の照明を担当。華やかな現場の裏方で活躍したものの、先代が体調を崩した事をきっかけに25歳で別府へ帰郷して、家業を継ぎました。
ひと頃の賑やかさが消えてしまった別府での仕事は細々としたものでしたが、東京で鍛えられた照明技術の手腕に注目した地元のテレビCM制作会社から照明を依頼されたことをきっかけに、多岐にわたる発注をいただけるようになりました。2002年には代表取締役へ就任。東京で制作するCM映像の照明も請け負うことも多く、別府と東京を往復する毎日を過ごしました。
「最近では、別府を当時のような賑やかな町にしたいとの思いで、5月のゴールデンウィークに『べっぷ駅前ストリートマーケット』というイベントを仲間たちと企画して、2014年から別府駅前で開催しています」
さらには2018年の国民文化祭、2019年ラグビーワールドカップ開催が控えている大分県。業界では「大分県照明・音響・舞台事業者協同組合」を2017年2月に立ち上げ、連携・協力してイベントを盛り上げる動きも始まっています。
「地域のイベントを裏方として支えていることに誇りをもった仲間が増えています。大分県は、これからまだまだ盛り上がりますよ」
頼もしい言葉に、わくわくしてきます。