時代は変われど、地域にとって かけがえのない存在になる店づくり
コンビニエンスストアが地域の至るところに出店し、大型ショッピングセンターやディスカウントスーパーの積極的な店舗展開、さらにはインターネットショップの台頭も重なり、地域の食料品店として身近な役割を果たしてきた小型スーパーの存在感が薄れてきています。
その一方で、食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる、いわゆる「買い物難民」「買い物弱者」も増加の一途をたどっており、とりわけ過疎地に住む高齢者にとっては深刻さが増しています。農林水産省の発表によると、65歳以上の買い物弱者は2015年時点において全国で824万6,000人にものぼるという結果も出ています。
中津市伊藤田に店を構える有限会社かむろ酒フードセンターは、創業以来60年にわたり地域の生活インフラ店としての役割を果たしてきた食料品店です。酒屋からスタートした同店ですが、近隣に大型ショッピングモールが進出し、主要幹線道路が移転しても、その親しみやすい店づくりで地元民に愛されてきました。二代目社長となる家室哲朗代表取締役の、地元への献身的な人柄も同店の人気を支えています。
かむろ酒フードセンターでは2003年の酒類販売完全自由化に伴い、自社製による惣菜・弁当の販売を開始しました。新規事業であったため、試行錯誤を繰り返す苦労もありましたが、既製品にはない手作りの味わいが評判を呼び、店売りだけでなく、各種会合やスポーツ大会等での利用、企業や病院の売店での販売もされるようになりました。今では売上全体の6割を占めるようになり、厨房設備を充実させています。
「みらい信金を通じた専門家派遣制度も利用しながら、味付けや盛り方の研究、レシピの充実、原価率の改善等、あらゆる視点から質の向上を図っています」(家室哲朗代表取締役)
一番人気の看板商品は、からあげ弁当。からあげブーム以前から力を入れてきただけあって、若鶏の肉質と、ほど良いニンニクの香りが食欲をそそります。
そして同社が力を入れている事業が、2018年にスタートした無料宅配サービスです。1回1,000円以上であれば、入会金・配達料も不要で、店売り価格で食料品や日用品、さらには日替わり弁当まで届けるというシステム。雨の日や買い物に行けない日には便利な存在と、次第に人気が高まってきています。前述の「買い物弱者」に該当する独り暮らしのご年配の方からの注文も増えてきており、弁当に関しては薄味にしてお届けするという細やかな配慮もされています。
「近隣地区が中心ですが、可能な限りエリア外の高齢者にお届けすることもあります。美味しいと感謝されると、商売の励みになります」
かむろ酒フードセンターは、地域に欠かせない存在となっています。