〝からあげのまち〟で愛された味を
全国の家庭へ届けるために
いまや全国に名を轟かす存在となった大分県のからあげ。その震源地は“からあげの聖地”とされる中津と、“からあげ専門店発祥の地”である宇佐の両市と言われています。いずれの町にも多彩な人気店がひしめきあっていますが、『からあげ大吉』もそのひとつ。宇佐市生まれの宮本博幸氏が、1989年に中津で創業し、第一号店は吉富町(福岡県)に出店という逸話からも、大勢の人に愛され、育てられてきた味だとわかります。宮本圭一郎代表取締役は、同店の美味しいからあげの作り方について胸を張って説明します。
「毎朝仕入れる国産若鶏の生肉から余分な脂を抜いた下ごしらえをして、醤油ベースの秘伝のタレに4時間ほど漬け込み、片栗粉をまぶしてサクッと揚げていきます。15種類以上の調味料をブレンドするタレの原料は、すべて国産品です」
テイクアウト形式でスタートした『からあげ大吉』ですが、全国各地の催事イベントへ積極的に出店し、着実にファンを獲得してきました。
「そこから『からあげ大吉』の屋号を掲げる店を全国にオープンする道すじを作りました。独自の暖簾分けシステムを採用し、最初に調理指導や厨房器具・仕入先の紹介をした後は、当店秘伝のタレを卸す契約だけ。独立採算制で営業方法は自由というシンプルなシステムで、オーナーさんが地域にあった店づくりを実践しています」
通常のフランチャイズシステムと違いロイヤリティが発生しない点も評判となり、九州はもちろん関西・関東地区まで参加店舗を増やしてきました。法人化した2014年と翌年には『からあげグランプリ』(日本唐揚協会主催)西日本しょうゆダレ部門で2年連続金賞を受賞し、そのブランド力を確固たるものにしました。
「ネットを通じたお取り寄せ販売にも力を入れてきました。ご家庭でも簡単に調理していただけるようタレ漬け・衣付けまで済ませ、あとは揚げるだけという商品をいち早く開発しました。現在は、レンジで温めるだけで揚げたての美味しさを楽しめる急速冷凍商品も販売しています。たとえお取り寄せの商品でも、お店でお買い上げいただくものと同じ味を楽しんでもらいたいですね」
コロナ禍で催事が低迷していた時期もありましたが、事業再構築補助金を活用してキッチンカーを導入したことで、屋外イベントに新たな機動力が加わりました。
躍進を続ける同社の強みは、弟の宮本幸明取締役との息の合った経営体制にもあります。
「宮本幸明取締役とは催事出店や営業に至るまで、父親の指導を仰ぎながら連携して経営に取り組んできました。兄弟ではありますが、ビジネスパートナーとしても信頼できる間柄です」
“冷めても美味しい”が『からあげ大吉』のキャッチフレーズですが、“冷めることのない熱い絆”が同社の未来を支えているのです。