オリジナル木製ツリーのブランド化で、
大分県産材の需要拡大を促す
2013年夏から冬にかけ、東京・六本木ヒルズのホテル、グランドハイアット東京のロビーに、大分県産材を使った高さ4mのシンボルツリーが出現しました。『LOVE Tree』と名付けられたホテル開業10周年企画では、季節ごとに変わるオーナメント(装飾品)の販売収益金を東日本大震災の復興支援活動へ寄付する企画も実施し、大きな反響を呼びました。
このツリーを制作したのが、中津市で建具や家具等を製造するなど木工業全般を手がける株式会社九州ダイトの渡辺英一代表取締役社長です。 「宮城県の被災地も訪問し、木工教室を通じて子どもたちと交流ができました。もともと『なかつ6次産業創生推進協議会』のワークショップで、大分県産材を使った情報発信が出来ないか話し合っていたところ、ホテルの企画担当者から声をかけられたことから始まったプロジェクトです。その後、ブランド名を『ひととき』として、製品化しました」
株式会社九州ダイトは、昭和42年に有限会社渡辺建具として法人設立。平成18年には渡辺英一氏が二代目社長に就任し、現在の社名に変更しました。後継者不足に悩む業界で、渡辺社長は大分県産木材の知名度アップと、木工職人の地位向上を目指し、様々な活動に取り組んでいます。
また、木材を利用した教育活動である“木育”にも積極的で、中津市内の職人による集まり「ステージ中津491」主催のイベント「職人フェスティバル」への参加をはじめ、木製遊具や木工教室等を通じて、多くの参加者に木の温もりを感じてもらっています。さらに会社の工場敷地内に教室棟を作り、木工教室も開催しています。
「大分県産杉で作ったタマゴ型のボール約2,300個を直径2mの円形にかたどった木製プールに入れた遊具『タマゴプール』も好評で、『ひととき』と共に各地のイベントや施設へのレンタルも受け付けています」
このように業界の未来を担う企業活動を実践してきた同社は、大分県経営革新の承認を取得。グッドデザイン商品創出支援事業にも選定され、2015年7月には幕張メッセで開催された見本市に初出展しました。
「展示した『ひととき』の周りに木製ベンチを設置して、憩いの空間を提供することで、多くの来場者の目を引きました。おかげで広告代理店や空間プロデューサー等から問い合わせが届くようになりました」
同社にとって大きなターニングポイントをもたらした『ひととき』。今後は卓上版キットを企画して、グッドデザイン賞の取得を目標にしているとのこと。 『ひととき』が、“幸福の木”になる日も近そうです。