「一期一会」のこころでまちの魅力づくりに貢献

鉄輪のバス停を降りてすぐの、いでゆ坂。鉄輪温泉のメーンストリートとも言われる、温泉情緒の漂う石畳を下っていくと見えてくる旅館が、みゆき屋です。

玄関までのアプローチには古い陶器が並べられ、一見、アンティークショップと見間違う風情。館内にも立派な品々が所狭しと展示されており、「いらっしゃいませ」と、この宿の代表である伊東一美女将から声をかけられるまで、つい見とれてしまうほどでした。

「すべて主人がコツコツと集めてきた骨董品なんですよ。もともと公務員だったのですが、趣味が高じて今では古物商の免許をとるまでになっています(笑)。おかげで宿泊客の皆さんの目も楽しませてくれています」

こう話す女将も、結婚前は豊後高田市役所に勤務していた公務員。別府に嫁いできてからは、ご主人のお母様を手伝い、みゆき屋をきりもりしてきました。

「私にとって、当時の別府はあこがれの地。でも接客業は初めてで、何もわからない私を、母は常にお客様の身になって動くようにと言い続け、忍耐強く私を女将に育ててくれました。優しかった両親と、少し厳しい主人がいたからこそ、今の私があるのだと思います」

みゆき屋の創業は昭和15年。女将が嫁いできた当時のみゆき屋は貸間が中心で、宿泊客は自炊される方がほとんどだったそうです。しかし、そのうち料理も提供するようになり、調理師免許をとって女将自らが厨房に立つように。

「いまでも女将の私が板長です。お客様の舌はすごく肥えていらっしゃいますので、少しでも、ご満足のいくよう、日々勉強を重ねています」

鉄輪名物の地獄蒸しをはじめ、大分の海の幸や山の幸をふんだんに取り入れた手料理は、宿の人気を支えています。“骨董の宿”といわれるだけあり、器に使われている有田焼も、趣深い色合いと柄で料理を美味しく引き立てます。これに加え、石菖(薬草)を使った本格的な蒸し湯があることも、この宿を特徴づけています。

「正直なところ、結婚して宿を手伝いはじめたばかりの頃は、女将は大変な仕事だなと思うことばかりでした。月日が経つにつれ、この仕事をしていなければ巡り会うことのない多くの地域の人々と出会って語り合うことができ、そしてこの宿に泊まったことを喜んでくださっているお客様がいることに気がつきました。大変な仕事ではあっても、旅館業を大切な天職と思うようになりました。最近は外国人のお客様も増えており、カタコトの英会話でコミュニケーションがとれた時は喜びです(笑)。これからも“一期一会”の心でお客様と接していきたいと思います」

女将の言葉ひとつひとつには、上品でおっとりした語り口調でありながら、どこか“芯”の強さを感じさせます。それがまた、みゆき屋の大きな魅力につながっているのでしょう。

「イベント等に取り組むことで、年間を通して、なにかしら人を引きつけられる鉄輪のまちにしていきたい。そのためには、全員がおもてなしの心を常に持ち続けることが大切です」

女将が描く鉄輪の未来に、期待は募ります。

profile




旅館・民宿
みゆき屋

代表取締役
伊東 一美 氏
(鉄輪支部会員)


別府市鉄輪東6組
TEL.0977-66-0360
FAX.0977-66-0388

■オフィシャルサイト
http://www.miyukiya.net/