贈り物の魅力を増幅させる心をこめた“オンリーワン”
観光関連の業種と聞いて、まず思い浮かぶのが旅館・ホテルなどの宿泊施設やバスやタクシーを扱う運輸業、そしてお土産品店などが思い浮かびます。その土産品の製造を陰ながら支えてきた業種が、パッケージや包装紙を製造する紙器加工業です。多い時は別府市内だけで10社以上もあったそうですが、いまでは県内の事業所数もわずか。今回ご紹介する株式会社都留紙器工業所は、特にボール紙や化粧紙を接着剤で貼りあわせて仕上げる「貼り箱」を造っている会社です。
「商品を生かすも殺すもパッケージ次第」と、胸を張って話すのは、同社の2代目にあたる都留康取締役会長。同社の創業は大正12年。戦後、別府が日本を代表する観光地へと変貌を遂げようとしていた当時の人気土産「湯の花餅」「ザボン漬け」等の化粧箱も、同社が手がけたものでした。このほか各種土産品の包装資材製造に加え、大手メーカーから委託された衣装箱の製造販売で県内一円に販路を拡大。協力会社と共に、印刷紙器やオリジナル紙袋の販売にもいち早く取り組み、パッケージ業界では突出した存在感を持つ企業へ。家族経営ながらも、いまでは大手企業の高級化粧箱やギフトボックス、紙袋、ポリ袋など、包装資材全般のほか、インターネットで海外からの受注製造も承っているそうです。
「魅力あるデザインで商材を演出して付加価値を付け、それに見合った価格が決まり、そこから発注元の売上増に貢献する。手加工が中心で、多品種・少ロットに対応しており、なかなか大手が参入できない分野です」
3代目となる都留慎治代表取締役社長のお話からは、パッケージが担う役割の大切さが伝わってきます。単に商品を包装して保護するだけにとどまらず、商品のクォリティーを独自のデザインで表現し、果ては企業のブランドイメージを伝えるマーケティング・ツールにもなる……。長年の実績から積み上げられた企業哲学は、同社が生み出す製品ひとつひとつに集約されています。
予想以上の反響を呼んだのが、「パッケージプラザ都留」のオープンです。
「業界では珍しいアンテナショップとしてスタートしたのですが、誕生日やクリスマスなど自分なりのラッピングによる贈り物にしたいというお客さまが多数来店。店頭で実施したラッピングのアドバイスも好評でした」
長引く不況、原価の高騰、容器包装リサイクル法の施行と、業界を取り巻く環境が激変するなか、“オンリーワン”を求める消費者の嗜好にマッチしたといえます。その思いを注いだヒット商品が「オンリーワンBOX」です。
「ご希望に応じて写真やデザインを施す、1個からつくれるボックスです。お誕生日や卒業お祝い、趣味の品を収納する整理箱と、まさに世界でひとつしかない“宝箱”として使えます」
都留紙器工業所ならではのクリエィティブな提案力は、私たちの暮らしに夢を吹き込む“魔法”として機能しているのです。