ステップ(2) ネーミング

前回の「古本屋再生計画」ステップ(1)では、古本屋さんのイメージの解析を行いました。これは、古本屋再生計画を考えるうえで、課題をあぶり出すことが目的でした。その結果、古本屋(古書店)には、“古臭い”というイメージがあり、「ブックオフ」のような新古書店と比べると暗く重い感じがする。生活者の潜在的欲求に応えていないという問題が浮かび上がりました。そこで、ステップ(2)では、言葉を道具として、これらの問題を解決していきたいと思います。

まず、店名を改めたいと思います。これまでは『○○書店』でしたが、これを『リボン館』または『リボン館 ○○書店』とネーミングします。リボンの“リ”はリデュース・リユース・リサイクルの“re”で、「再び」を表す言葉。リボンの“ボン”は「本」のことで、英文字表記なら「Re-bon」となります。

この「リボン」という言葉をキーにして、いろいろな展開を行っていきます。外観的には看板の制作がありますが、この際、デザイナーの手を借りてロゴをつくります。さらに「リボン」のキャラクターをつくってもいいでしょう。といっても、顧客に合わせたものにしないと違う方向に行ってしまうので注意が必要ですが…。ロゴをつくったら、看板や紙袋、ホームページなどに展開していきます。

ステップ(3) 催しとコピー

古本屋さん独自の催しというのは、あまり前例がないかもしれませんが、社会の動きを見ながらタイムリーに実施していきます。たとえば、人気作家の本を原作にした映画やドラマが話題になっていれば、「今、話題の○○○○の原作を“格安で”販売中!」というキャッチコピーで、簡単なポスターを制作して店頭に貼り出します。また、半身浴をテーマにして「半身浴のおともに、リボン館のre本」とか「半身浴でコレ一冊読んだら、○kgのダイエットに成功!(店主の実験済み)」というコピーのポスターも考えられます。新しい本は浴室に持ち込みにくいものですが、古本なら気軽にそれができるというメリットを生かした広告展開です。あるいは、難関高校(大学)合格者を探し、どんな参考書を使っていたかを調査・買い取りして、「合格者が使っていた参考書(赤線入り)、あります」なんていうコピーのポスターも面白いと思います。

ほかにも、夏休みの読書感想文用には「古い本も、新しい本も中味は同じ! どうせ買うなら安く買って、お小遣いを増やそう」とか「年代別アイドル本特集、実施中!」なんていうものもいいかもしれません。

以上のように、生活者のニーズを掘り起こし、『リボン館』のメリットをアピールしていきます。このようなアピールは、そのポスターのコピーを見た人に直接的な行動、つまり商品(古本)の購入を促すことにもつながりますが、もう一つ、重要な目的があります。それは“情報を発信する新しいタイプの古本屋さん”という認識を生活者に持ってもらうということです。

従来の古本屋さんは、座してお客さまを待つというビジネスでした。お客さまからすると、古本屋さんとは店内をグルグル回りながら、本との出会いを楽しむ場となるわけです。個人的には、こんな古本屋さんは嫌いではないのですが、今回は「売りに結びつく提案」が課題ですから、“情報を発信する古本屋さん”というコンセプトでプランしました。

コピーライターというと、言葉の組み合わせだけで広告の文案を考える職業と思われがちなのですが、言葉遊びだけではお客さまを動かすことはできません。今回例に上げたポスターのコピーは、流行語になったり、広告賞を受賞するようなものではありません。しかし、お客さまの心に届きやすいコピーだと思います。地方在住のコピーライターは、こんな仕事もやっています。

profile



一丸幹雄 
(いちまる・みきお)

昭和30年、大分県杵築市生まれ。

日本大学法学部新聞学科卒業。㈱宣伝会議「コピーライター養成講座」一般コース・専門コース修了後、東京の広告制作会社に勤務。昭和56年にUターン後、大分市の広告代理店、制作会社に勤務。県内各企業の広告や行政の広報、雑誌の取材・執筆を手がける。 現在、フリーランスとして活動中。