※メイン写真はくまモン誕生直後に買った初代ぬいぐるみ(右)と、今回熊本城で見つけた2代目。初代はイラストに忠実です

ゆるキャラを語る上で欠かせないのが、世界的人気を誇る「くまモン」です。
「今さらくまモン?」とお思いかもしれませんが、先日熊本出張に行ってくまモンの偉大さを再認識したので、今回書かせていただきます。

くまモンは2011年の九州新幹線全線開業をきっかけに制作された熊本県のPRキャラクター。「くまもとサプライズ!」キャンペーンのロゴの“おまけ”として登場したにも関わらず、2012年に行われた「ゆるキャラグランプリ」でいきなり優勝するなど、この頃から規格外の人気でした。

熊本の街はどこに行ってもくまモン、くまモン!
巷にあふれるくまモンを利用した関連商品の売り上げは、2022年だけでなんと1590億円! これは2011年の調査開始以降2番目の売り上げで、累計では1兆3000億円に迫る勢いだそうです。

6月に博多で見かけたくまモン。大人たちが夢中でシャッターを切っていました。
今年はなんとM-1にも参加し、1回戦を突破したそうです!

今もなお地域に大きな経済効果をもたらし続けるくまモン。この桁違いの成功に導いた要因の一つに、緻密なキャラ設定と使いやすさがあります。
くまモンは「知事から熊本県営業部長兼しあわせ部長に抜擢された、いちおう公務員」という設定を忠実に守り、「着ぐるみ」ではなく「くまモン」という人格(?)を持っています。なので、この世に1人しか存在せず、同じく世界に1人しかいないという点ではミッキーマウスと同等とも言えます。

熊本の“熊”をモチーフにしたシンプルなフォルム。黒をベースに色を多用せず、馴染みやすいデザイン。しかも版権フリー扱い‼️
使用規定はあるものの、許可さえ取れれば県外の人でも無料で使えるとあって、爆発的な広がりを見せました。私も以前温泉の本を編集した際、表紙で使いました。
ちなみに公式グッズの第一号が仏壇というのも、懐の深さを窺わせます。

ロイヤリティーフリーに対し、くまモンの生みの親の1人である小山薫堂さんは過去のインタビューで、「企業の商品を “メディア”として考えた。お金をもらうより、キャラクターが世の中にあふれることの方がメリットが大きい」と語っています。
2000年代後半からのゆるキャラブームで、様々なキャラクターが生まれては眠っていく中、活躍し続けるくまモンは見習うべき存在だと思います。

先日、久しぶりに熊本城へ行きました。
ご存知の通り、2016年の熊本地震で受けた被害は甚大で、天守閣と長塀は復旧しましたが、まだ全体の2割程度の復旧だそうです。この日もあちらこちらで工事が行われていましたが、修学旅行生や外国人の団体など、場内は多くの観光客で賑わっていました。

※復旧が終わった熊本城の天守閣。内部公開も再開しています。
熊本城といえば、昔から注目しているキャラクターが「ひごまる」です。2007年の熊本城築城400年祭で誕生した、お城をモチーフにした熊本市のキャラクターですが、くまモンより前から存在しているにもかかわらず、今の今までぬいぐるみはおろか、グッズを見かけたことがありません(着ぐるみの稼働は多いようですが)。

昨年熊本城の復興計画が見直され、被災規模の大きさとその専門性の重要度から工期が15年延長となり、2052年度までかかる見通しとなりました。城全体の被害総額は634億円にも上るそうです。
熊本城復興のためにも、「熊本城の妖精」であるひごまるのグッズ化を解禁するのは今ではないでしょうか⁉️ 朗報をお待ちしております。

※こちらが(私的に)大注目のひごまる。熊本城復興のために一肌脱いでくれ!

profile

相原 利衣子
あいはら・りえこ:宮崎県都城市出身。大分市在住。株式会社Oulu(オウル)編集者、プロデューサー。大分の出版社で22年雑誌制作に携わり、2021年に編集プロダクション「Oulu」を設立。webメディアや新聞、パンフレットなどの紙媒体から、パッケージやグッズなどのプロダクトデザイン、ラジオ構成作家まで、「丸投げ、よろんで」の精神で活動中。趣味は飲酒、飲食全般で、初対面の人とも陽気に酒を酌み交わせるのが特技です。