すでに梅雨明けしたような猛暑の7月初め、横浜・大さん橋ホールで開催された「YOKOHAMA MUSIC STYLE vol.3~Guitar Trade Show」に潜入取材してきました。
2日間にわたって開催されたイベントは、タイトルからも分かるようにギター及び関連グッズのトレードショーやライヴ等が主な内容。1回目(2019年)は「海上音楽フェス×新人発掘ミーティング」というメジャーレコード会社主体のライヴイベント(ミニフェス)でした。
コロナ禍の中断を経て2022年に再開された同イベントは、ギターのトレードショー中心に様変わりしていました。コロナ禍前の国内外の音楽シーンを俯瞰してみると、特に若い世代はHIP-HOP、ダンスミュージックが中心、視聴環境はサブスク中心で曲も短め、DJ的にループする楽曲嗜好が強まっています。いわゆる「Aメロ~Bメロ~サビ」の曲構成や、ギターソロが不要な音楽が主流になってしまいました。
そんな時にギタートレードショーが大々的に開催されると聞いて、「一体どんな客層?」「時代錯誤的な汗臭いロッカー風情の輩か?」「定年後の生きがいである親父バンドのギタリストが集結するのか?」と、勝手な思いを膨らませていました(笑)。
しかし、いざ会場に足を踏み入れてみると、もちろんそのような方々も多数見受けられましたが、想像を遥かに超えて若い、しかも女子が多いことに驚きました。各メーカーブースの前でベースを弾きまくる女子もいれば、当日ライヴに出演したバンドメンバーの追っかけ女子でごった返すブースも!
昨年末あたりから本格的に再稼働してきたライヴ・エンタメ業界に続いて、どうやら楽器業界(特にギターやベース等のバンド楽器)が息を吹き返してきたようです。先日地方のライヴハウスで観た、アイドルグループ・NMB48に在籍していた山本彩がエレキギター片手にシャウトするロック度100%のパフォーマンスに興奮するファンは、アイドルオタクというより、若い女性が中心。ちなみに、このバンドのドラムもバカテク女子。「ロックの熱さを伝えるエレキ・ギターの復権!!」ともいえる事象をヒシヒシと感じます。
ところで、音楽通にはギターといえば「フェンダー派かギブソン派か」というくらいに有名なツートップが存在しますが、どうやらこちらも明暗がくっきりしてきたように感じます。
レスポールという永遠の名器を産み出したギブソン社は、2018年に米破産法適用を申請し、実質破産という悲劇を迎えました。そして一方の雄・フェンダー社は、冬の時代を乗り越え、なんと今年6月30日に世界初(!!)の旗艦店「FENDER FLAGSHIP TOKYO」を東京・原宿にオープンさせるという奇跡を起こしました。
これまで楽器店と言えば御茶ノ水・神保町界隈に密集した、バカテク自慢の自称・ミュージシャンの溜まり場なイメージでしたが、よりによって原宿(H&M跡)という立地を選び、単なるメガ楽器ショップ&博物館的要素だけでなく、アパレルにも本格的に進出というから驚きも倍増です。これまでもUNIQLO「UT」でフェンダーギターTシャツは販売されていましたが、今回新規展開するアパレル部門では、ディレクターに大御所スタイリスト島津由行氏を起用して「F IS FOR FENDER」を立ち上げるという超本気ぶりにさらに驚きました。
今年1月にギター・レジェンド、ジェフ・ベックが急逝し(生前にフェンダー社の白いストラトキャスターを愛用)、同じくスーパーギタリスト、エリック・クラプトンは武道館公演100回を達成(彼もストラトキャスターを愛用)するなど、時代を超え、ジャンルを超え、世代を超え、老若男女にギターミュージックの魅力が再び伝わり始めているのかもしれません。