街を変える、シン・書店のミライ
例えば「後継ぎが見つからない」「近くに大型ショッピングモールが出来て客数が激減した」「コロナ禍をきっかけに仕事や商売を変えた」等の理由で、商店街の食堂や書店が相変わらず閉店を余儀なくされています。
そんな中、今年3月超大型書店「八重洲ブックセンター」が閉店に追い込まれたことは衝撃でした。
「若者の読書離れ」「消費者の購買手段がEC(amazon等)に大きくシフトした」「電子書籍の普及」等、それなりの言い訳は考えつきますが、やはり書店のビジネスモデル(商慣習)、厳しく言えば既存書店ビジネス関係者の怠慢が招いた必然かもしれません。
芥川賞・直木賞受賞作やベストセラーのビジネス書を店頭に積み上げたり、夜中に村上春樹の新作発売カウントダウンイベントを実施したり、旧態依然とした販売方法がいまだに主流だったりするわけです。もちろ独自のランキングやレコメンドを打ち出して、なんとか客足を伸ばそうとする健気な書店も見受けられますが。
そんな中で「…らしくない」「クセの強いセレクション」を売りにした書店が台頭してきています。
“東京のブルックリン“こと「蔵前」(台東区)の裏通りに4月21日ひっそりとオープンした「透明書店」は、企業の会計・人事労務をサポートする会社「fleee株式会社」の新規事業。店名(社名)の「透明」は経営情報等をすべてオープンに発信するという意味。
実際書店に立ち寄ってみると、肝心の品揃えは約3,000冊で、ビジネス書・フィクション・エッセイ・絵本等、比較的クセのある本が多め。特徴は1/3(1,000冊)は小さな出版社や個人のリトルプレスが作った本を並べ、いわゆる「スモールビジネス支援」といったユニークな(裏)ミッションを掲げています。オープニングから開催されているスモールイベント(定員30名程度)も、出版記念トークイベントというよりビジネスセミナー的な内容も多く、あまり文学の香りがしないのも特徴です。
ちなみにChatGPTを活用したAI接客等の新機軸(新奇性)の導入にもぬかりがありません(「くらげ」というキャラクターが副店長という設定)。
母体がそこそこ大手のIT企業でもあり、単なる小さな街の書店としての収益性にこだわる必要が無いことはポイントですが、このような「シン・書店のビジネスモデル」が広がることで、街の表情が変わる新たな街づくりの手法となりうる可能性を感じます。
他にも一冊だけの本だけを扱う「森岡書店」(2015年/銀座)は「スープ・ストック」「パス・ザ・バトン」等を手掛ける株式会社スマイルズが出資・運営をサポートしています。
超個性的な品揃え&ユニークな店舗演出の先駆的存在「東京天狼院」(2013年/池袋) は「天狼院BOX」というお客様自身が自分の本棚≒小さな書店(30㌢×30㌢ 1か月間)を持つことが出来るという人気企画が顧客をしっかりグリップしています。
規模や品揃えに店主(オーナー企業)の明確な意思や個性を感じる「シン・書店」の存在は、街の表情をさりげなく、かつ大胆に変えることが可能だと思います。
筆者が最近1ヶ月にAmazonで購入した本