業務の中で、自社のすばらしさや商品の良さ、サービスの充実度をアナウンスする場合、どうしても「いろんな人に知って欲しい」という想いが文章ににじみ出やすくなります。
届けたい人に、自分たちの思いとズレもなくストレートに届けばそれがベストなのですが、届けたい熱量に差があると、どんなにいい文章であっても逆効果になってしまう可能性があります。
心は、潜在的にある理性や意志の元。そして感情は、瞬発的で物事に対して沸き起こるもの。この2つのバランスがとっても大事なんですよね。
■Web文章は原則受け手主義
自社紹介やサービス、商品について文字にするということは、それが宣伝であったり広報であったり。「知らせなければならない」「知らせておいたほうが良い」ことが元にあって、発信しようとして文章書きにいそしんでいるはず。
ただ、顧客に発送すれば届くようなDM(ダイレクトメール)とは違い、インターネット記事は、不特定多数の人が一体いつ引き当てるのかも分からないような、もはやビックリマンチョコのプレミアを引き当てるくらい(古い?)の薄い確率で、引き寄せたい人にラブレターを捧げるようなものです。
「今いらない」「ちょっと前にアプローチして欲しかった」と、完全に受け手のマインドとタイミングによって舵取りされてしまいます。
未だに郵送のDMで営業する企業があるのは、やはりそこにニーズがあるから。Webで調べたり、商品を購入することをためらう方は一定数います。
その点、紙であれば見たいタイミングで自ら手に取ります。気になっていれば捨てずに取っておきますし、紙ごみを整理している途中にふと見つけて、「あ、そういえばこれ気になってたのよ」と、ユーザー自身が興味を掘り起こします。ちなみに私の実家では、ベルーナのカタログがリビングにいつも置いてあります(定期的に段ボールも見ます=何か買っています)。
Web広告は今や、検索連動型(一度検索したキーワードや表示履歴から、繰り返し同じ情報をユーザーに見せる)が定着していますが、そもそもターゲットは検索してくれるような人なのか、Web活用を積極的にやる人なのか…1回調べただけなのに何度も同じ内容を見せられるから、正直ウンザリ。なんて人も中にはいるでしょう。
見てもらえない可能性を上げればキリがないですが、そもそも前提となるターゲット選定(ターゲティング)をキチンと上手くできていなければ、すべての対策や努力をムダにしかねない、という恐ろしさがWeb文章にはあるんです。
■人が行動を起こすきっかけとタイミング
第3回で、「Googleさんはユーザーに優しいサイトを高く評価するんですよー」という話をしました。これは、検索エンジン最適化=SEOについて、でしたね。
第7回では「読み手の流れを考える上で、ターゲティングは外せん!」といったことも含めてマインドマップでも作ってみましょうか、とお話しました。
言い方に語弊があるかもしれませんが、誤解を恐れずにいえば、これらはすべて、狙った獲物を釣りあげるためのタスク。必要最小限で、やらなければならないことです。
ユーザーリサーチがこれ以下ならば、なし崩し的に「俺が俺が」の文章に引きずり込まれます。
ただ、それだけやればいいのか?といわれれば、実際にはさらなる深堀りが必要だと考えます。ここまでで終わっては、発信者が受け手に対して「いつでも見てね。見てもらえたらうれしいです」くらいのご紹介的テイストになることは否めません。
前述したように、心の潜在意識と衝動・刺激(感情)が上手くマッチすることで、人は行動を起こしやすくなります。
心で欲しているものなら、ユーザーはどんな理由をつけてでも、いつでも行動を起こすんです。ジュエリーが好きな女性が次々と新しいものを買って「いやこれは限定品だから」「前に買ったのとデザインが違うのよ」と、買ったことに対する言いわけをしている姿。想像できますよね。
逆に、素晴らしく焦げつかないフライパンがあったとしても、家のフライパンでひとまず満足している人は、相当なアプローチをしなければ買いません。ただ、焦げ付きが気になっているタイミングと重なっていたら…
人の行動を引き起こすために心と感情を考察することは、もはやマーケティングと心理学の域なわけです。
【今回の脳内開放の法則】
受け手主義のWeb文章は、心と感情のタイミングがマッチした瞬間に読んで(行動して)もらえるのだ。
たかが文章書き…と思うかもしれませんが、読み手の心理をどこまで理解して行動を推測するか。これが実はものすごく大事なんですよ!
ライターが語るにはスケールのデカい話になりつつありますが、第10回「心をゆさぶるWebテキストを書くには(後編)」では、具体的にどうやって理解し推測する?のポイントをご紹介します。乞うご期待。