[第47回 Z世代]
【問い】
近年良く聴く『Z世代』とはどのようなカテゴリ層を示すのか。その特徴をどのようにマーケティングに活用できるのか。
【方向性】
Z世代は96年から2015年に生まれた層を指し、デジタル、スマホ、SNS、動画活用が当たり前の世代。一方、大震災や多くの災害を経験してきた世代でもあり、リアルの体験を重視する側面と社会課題に高い意識を持ち合わせる。Z世代にリーチする場合、自分たちと異なるZ世代のメカニズムを把握して共感を呼ぶことがポイントになりそうだ。
【解説】
What:Z世代の定義
マーケティング活動と顧客分析は切っても切れない仲。いつも“ナントカ世代”などの人気ワードが飛び交う。
しかし、裏を返せば、大手コンサル会社が研究開発し、広告代理店が効率的に顧客獲得をするために大枚をはたいて取り組んでいる結果だ。そのエッセンスを活用しない手はない。
Z世代。
消費区分のひとつとして定義され、1996年頃から2015年に生まれた層を指す。2022年現時点において、年齢で7歳から26歳がZ世代。生まれた時からデジタル機器に接しており真のデジタルネイティブと呼ばれる。
1965年から90年生まれをX世代と呼んだ。幼少期からカラーテレビが存在し政治的関心が低い世代だ。
1981年から1996年はY世代。消費欲が旺盛な若年層の時に、アナログからデジタル化を経験した世代で、合わせてデジタルネイティブ、ミレニアル世代と呼ばれた。
Why:Z世代の特徴を表す3つの事例
Z世代を理解するために3つの特徴的な事例を紹介する。
【スマホの縦型動画】
スマホと5G高速通信が当たり前になった今、動画を中心とするコンテンツはZ世代にとって当たり前だ。YouTube、TikTokが普及し、インスタグラムなどのSNSも動画表示に対応を切り替えている。
Z世代以前の調べモノはGoogleだったが、Z世代はまず動画で検索する。
そして動画の形式は横ではなく縦が一般的だ。そのためスマホで録画した縦型の動画を保存、編集、サイトやアプリに配信することで、自社のコンテンツを作成する企業が増えている。そのような動画管理プラットフォームを提供するクラウドサービスも沢山ある。
従来、マーケティングや広報のチームに動画担当は脇役だったが、今は主役の扱いだ。聞いたことある組織の殆どが動画の編集、管理、エンジニアチームなど自前で束ねるまでになっている。
花王、光文社、良品計画、アパレルのヤマトインターナショナル等、動画の体裁をTikTok風にし、動画を見ながら情報取得、欲しい商品を注文できるような販売促進を行っている。
店舗系ビジネスでは、店員が商品や自社サービスをアピールする。そこではSNSの人気ライバーのように、スタジオや自店舗から情報を発信する取り組みもZ世代には人気で、日本の小売企業でも急速に導入されている。
といっても、動画の品質はスマホの性能で問題なく、中規模程度の企業であっても担当者が1、2名で動画を配信するケースも多い。
【キャッシュレス決済】
Z世代はキャッシュレスも当たり前。
日常生活はキャッシュレスで過ごし、家族の支出をリアルタイムで把握することが当たり前になっている。さらにスマホ決済で付与されたポイントは、投資運用にまわすなど余念がない。
今や結婚式では、PayPayを使ったご祝儀サービスの利用も増加している。
その動機は、新札を用意して頂く負担を無くすという配慮からだ。
結婚式場の支払いは前払いが一般的。であれば出席者が事前にご祝儀をスマホで送金していただければ、出席者も新郎新婦も互いの手間や負担が減るという算段だ。
また、若い世代のカップルや夫婦はキャッシュレス決済を行うことで、互いの支出を管理する。
同居するパートナーとは、生活費の管理に家計簿アプリと連動したプリペイドカードを使う。すると互いのお金の使い方を共有でき、無駄をなくすことが可能になるのだ。
ちなみにこれが成立した背景には、共働きの夫婦やカップルが増え、収入や支出の流れが複雑になったことも考えられる。
決済サービスを手掛けるインフキュリオンの調べによると、キャッシュレス決済におけるモバイルの割合は年齢が若くなるほど高く、10代では7割、20代でも5割近くが利用している。
子どもの頃は現金が主流で、学生や社会人になってキャッシュレス決済を導入したのがY世代であれば、Z世代含めこれからの世代は、子どもの頃からキャッシュレス決済が当たり前になっているのだ。
【リアルな体験】
Z世代を中心とする若者は、「付き合いが悪い」「リアルコミュニケーションが下手」という評価が大企業の人事では定着している。
といっても、仕事以外で実利が少ない上司や先輩と一緒にいても「価値が無い」と感じているだけで、「意味のある付き合い」はリアルを求める傾向が強い。
東京・高円寺の銭湯「小杉湯」は、来客者のピークは1968年の平均530人で、直近は147人まで減少していた。ところが昨今は、平日で400人から500人、週末になるとコンビニの来店客数なみの800人から1,000人にまで増えている。その来客者の半数が30歳以下なのだ。
セルフサービスである銭湯はシェアリングエコノミー的で、若い世代とは相性が良いのだ。常連同士が軽く会釈し、挨拶する。この程よい距離感がフィットした。
そこには、独り暮らしの寂しさを「半径500メートルの裸の付き合いで解消する」などのニーズも存在する。モノに投資する満足感よりも、リアルな体験でコトに価値を感じるのもZ世代の特徴なのだ。
How:Z世代の特徴と活用のポイント
Z世代は、スマホ、デジタル、SNSが当たり前だ。
生まれてから早い段階でスマホやデジタル機器に触れ、SNSで友達とやり取りする。動画や映像で調べ物をこなし、それ自体が当たり前になっている。
これら媒体は、はじめから企業がピンポイントにマーケティングしている。
そのため、マス向け商品よりも、限られたコミュニティでの情報が身近に存在する。
結果的に自分にとって価値あるものを重要視する消費行動が誕生した。ブランドや一般的な知名度よりも、自分に価値があるものに対する投資が旺盛になる。
また、2011年に発生した東日本大震災をはじめ、昨今の大規模災害が日常になり、従来の世代よりも社会課題に対する関心が高い。
良し悪しは別として、テニスプレイヤーの大坂なおみ選手、環境活動家のグレタさんなどインフルエンサーの存在も大きく、社会問題を自分たちが解決すべき問題と捉えている。
一方で、経済感覚は実に堅実だ。
コスパを常に意識し、合理的な選択を求めている。メルカリやオークションアプリを駆使し、新品ではなく同じ機能・デザインであれば中古品の購入にも抵抗が少ない。リユース品は手頃で環境問題にも関与すると考え、合理的に活用しているのだ。
当然、消費に対する失敗は避けたく、口コミ評価や事前購入の情報収集は自ずと緻密になるのも伺える。
若者の言葉に「エモい」がある。
自分の感情や価値観の共感を大切にすることから誕生した。社会的な背景や、生まれた時から「もう日本経済の発展はない」と感じる世代だからこそ、作り込まれていない本物のリアルを重視する傾向が強いのだ。
まとめ
Z世代は、従来の世代ともまた違う価値観を持ち、自分らしさの追求と多様性を大事にする価値観を持ち合わせる。
デジタルツールを普通に使い、積極的に自分たちから情報にアプローチし、武装する。
そして共感し、価値を感じる商品に投資をする。
機能や利便性の追求に加え、ストーリーや体験を提案されることを待っている。
デジタル、スマホ、SNSが当たり前の世代だからこそ、リアルの体験を重視する側面と社会課題に高い意識を持ち合わせているのだ。
今後、Z世代に対してマーケティングを行う場合は、こういった特徴を理解し、デジタルとリアルを融合して共感を呼ぶことがポイントになりそうだ。