※「第21回 たしろ じゅんこさん/バルンバルンの森(中津市)#1」からの続き
■スタッフを含め「みんなが幸せになる」場所を目指す
──個性的なキャンプ場だけあって、コンセプトやターゲットが明確ですね。
たしろ そうですね。バルンバルンの森の考え方の中心に「みんなが幸せになる」というものがあります。ですから、キャンプ場ではあえて厳しめのルールを設けているんです。私たちが提供したいのは森の静かな時間。樹々を吹き抜ける風、あたたかい日差しや小鳥のさえずり。星空を見つめ、焚き火をしたり、ハンモックで読書したり、静かにゆったり過ごしたい人に来て欲しい。夜10時以降はクワイエットタイムなので騒がないなど、最初にお願いをしています。利用するお客さんはもちろん、スタッフを幸せにするためにも必要なことです。
──石窯や巣箱、ツリーハウス、カフェ、図書室など、普通のキャンプ場にはない、珍しくて楽しいアイテムがたくさんありますよね。アイデアのモトになるものは何でしょうか。
たしろ 森全体を見ていると、「あそこにこれがあったらいいかも」という感じで、どんどんアイデアが湧いてくるんです。どこへ出かけていっても「バルンバルンの森で出来ないか?」という目線で見てしまいますね。可愛いものやいいなと思ったものは、どうやったら森で出来るかを考えます。飲食店などに行くと、サービスの配置や導線などもよく観察しますね。接客がいいなと思ったらスタッフと共有して、取り入れることもありますよ。
──どこへ行っても森のことに結びつけてしまうんですね。でも、これほど個性的な森は最初からきっちりしたプランを描いたうえで作り込んでいったのですか?
たしろ 当初はファミリー向けで「みんなの笑顔が増える場所にしたい」というコンセプトだけでした。でも、子どもさんや家族全員を元気にするには、「お母さんを喜ばせてこそ」と考えるようになったんです。だから女性が好きなものや可愛いものを集めました。実を言うと、最初はキャンプ場をやるという意識ではなかったんですよ。そもそも私はインドア派だし、キャンプもしないし。だから自分の好きなようにアイデアを盛り込んでいった結果、今のスタイルになりました。
■ウッドショックの渦中にクラウドファンディングへ挑戦
──2022年1月からクラウドファンディングに取り組まれているそうですね。
たしろ 現在支援者を募集しています。これまですべて自己資金で運営してきたので、最初はクラファンなど考えもしませんでしたが、スタッフに勧められて挑戦しています。目的は新しいツリーハウスを建てる資金を捻出するためです。ここ最近は木材価格の高騰で、想像以上にお金がかかるんですよ。また、クラウドファンディングにチャレンジすることで、今まで知らなかった人たちに知ってもらえるかもしれないとの思いもあります。メッセージやメール、活動報告など今まで経験のない業務が増えて思った以上に時間がかかっていますが、だんだん楽しくなってきました。いろんな人にご支援いただいているという手応えを感じることも多く、励ましになっています。やってよかったです!
──クラファンをきっかけに新しいお客さんが全国から集まりそうですね。
たしろ 「愛される森になってきたな」と実感しています。私自身、キャンプ場に出会えたことで、人生がより豊かで楽しくなりました。木造のため、年月を重ねるうちに施設そのものはどうしても古びていきますが、その一方でバルンバルンの森を存続していくこと、残していくことが大切だという思いも強くなりました。修繕を繰り返しながら、私たちが思い描いていたものをカタチにしていく、終わりのない場所でもあります。
──バルンバルンの森を訪れる度に新しい発見がありそうですね。
たしろ 施設だけでなく、新しい企画にもチャレンジしていきたいですね。たとえばバルンバルンの森らしい、お土産づくりなど。あと、個人的な夢は、映画の舞台になりたいです。主演は大泉洋さんで(笑)。加えて、バルンバルンの森が一冊の本になるのも夢のひとつです。