境内に咲き誇る「ぶんご梅」がもたらす
地域コミュニティの広がり
日本人の心の拠り所として、古来から私たちの生活に密着してきた神社。「日本は無宗教の国」といわれながらも、新年には初詣に出かけ、子どもが生まれた時はお宮参り、その後は七五三、合格祈願、厄払い等、人生の様々な場面で神社が関わってきます。日本の神社数は約8万社あるといわれますが、大分県は人口10万人あたり178.91社(総数2,138社。文化庁『宗教年鑑』2009年版より)の神社があり、全国第五位。いかに信心深い県民性だということがわかります。
大分市中心部に位置する松栄山の中腹に鎮座するのが大分縣護國神社です。初詣には宇佐八幡宮(宇佐市)、春日神社(大分市)と共に、毎年多くの参拝客を数える神社として知られており、豊かな自然に囲まれた約5万坪の境内には日本一の大きさともいわれる絵馬、破魔矢、熊手、門松が奉納され、話題を集めます。さらに北側展望台に広がる大分臨海工業地帯の眺望は、大分市が2006年に実施した「私が選ぶおおいた100景」のアンケートで第3位にランキング。天気の良い日には国東半島や遠く四国までも望むことができ、市民から愛される神社である所以がわかります。
「明治8年(1875年)創建の当社には、大分県にゆかりのある英霊、約4万4000柱を主祭神とし、殉職警察官・自衛官を相殿に祀っています。展望台近くの慰霊碑や戦没者墓地の周辺には、大分県花のぶんご梅を中心に約200本の梅が植えられており、春に満開を迎える約500本の桜並木と共に、多くの参拝客に楽しんでいただいてます」
このように話す八坂秀史宮司は、2015年12月に就任したばかりで、前任の小野日隆宮司の志を引き継ぎ、地域に開かれた神社を目指しています。大分縣護國神社では、年間を通じて催される様々な行事も人気で、書道パフォーマンスも交えた新年の書初めにはじまり、七草粥、節分豆まき、朝顔展、菊花展、骨董市、冬至南瓜の振る舞い等々を開いています。
なかでも毎年3月第一日曜日に行われる「ぶんご梅まつり」は、多くの市民が楽しみにしている行事です。神楽や太鼓、三味線等の音楽会から、梅の種飛ばし大会、松栄山一息乱、お菓子まきといったユニークなイベントもあり、赤ちゃんの元気な声が響き渡る「泣き笑い相撲」には笑いがこぼれます。
「子どもの成長を願うイベントとして、最初は“泣き相撲”でスタートしたのですが、泣くどころか笑ってしまう赤ちゃんが多くて“泣き笑い相撲”に変更したんですよ(笑)。毎年100名前後の赤ちゃんが東西に分かれて泣いたり笑ったりする様子が微笑ましく、参加した赤ちゃん全員に差し上げる特製ハッピも人気です」
大分の春の到来を告げる今年の「ぶんご梅まつり」も、地域住民との絆を一層深めたようです。