■この街の整形手術に未来は…下北沢
典型的な「若者の街」「住みやすい街(常にランキングはトップクラス)」、最近ではあの『Time Out』誌が「2019年世界で最もクールな街50」の2位に選出した、東京を代表するブランドエリア『下北沢』。
しかし近年、「小田急線」VS「京王線」というライバル電鉄がメンツをかけてしのぎを削る大規模再開発が進行し、まさに前回のコラム「整形手術に失敗した街…渋谷」の二の舞的な悲劇が待ち受けている!?
小劇場、ライヴハウス、居酒屋&バーがひしめき合い、かつては戦後の闇市のような薄暗い路地に古着屋やちょっと怪しげな雑貨・食品を扱う店が軒を連ねていた、あの「サブカルの聖地・シモキタ」が「まちづくりの黒幕」たちによって「瀕死の状態」に!?…と言ったエキセントリックな表現もメディアやSNS上でも目につきます。
20数年前、パルコ勤務時代に、友人と下北沢のスズナリという超ディープなエリアで「たまりバーハレルヤ」というお店を副業で(もちろん会社に内緒で)やっていた、あの時代と比較して、ここ最近の街の変貌ぶりは(規模は違いますが)渋谷以上のインパクトがあります。
西武(百貨店)との戦いに勝利した東急グループが、大手不動産やIT企業を抱き込んで「未来なき再開発」に猛進している渋谷に対し、京王線との対決を優勢に(?)進める小田急主導の開発(下北線路街)に、ちょっとだけ「アカルイミライ」を感じている人達は少なからずいるのではないでしょうか。
一見すると次世代の商業施設を標榜し、ストリートカルチャー&ファッション目線を強調しながら、実は(IT系)富裕層に「New Luxury」を売り込む戦略(SHIBUYA「MIYASHITA PARK」が象徴的)の渋谷に対して、下北沢駅西口からちょっと離れたところ(小田急線の線路跡地)にホンワカ(?)と佇む「BONUS TRACK」という小さな「まち」には、穏やかな息遣いと初々しい志が感じられます。それぞれがユニークな店名を持った、個性的な飲食店・書店・ギャラリー・不動産店の他、コワーキングスペースやシェアキッチンが集まった、まるで「架空のまち」のようなミステリアスな雰囲気も醸し出している、発育途中のコミュニティです。
かつての下北沢ファンには受け入れ難い「今の空気」が流れていることも確か。
でも「過去と未来の流れ」を断ち切った「SHIBUYA」の整形手術(再開発)と違って、「シモキタ」への想いを大切にしながら、プチ整形を楽しんでいるように「新しいまちづくり」がゆったり進行する今の下北沢は、まだまだクールだと思います。東京だけでなく、これからの地方都市の再開発にも応用が効く手法ではないでしょうか。
この歳になって、ちょっとだけ住んでみたいと思える数少ない東京の街かもしれません。
PS 近くには「由縁別邸 代田」という、老舗感漂う温泉旅館もオープンし話題を集めています。