■問い
SDGsってどのような取組ですか?
■答え
SDGsは持続可能な社会を構築する世界的な取組です。
今回は、その概要や取組が始まった背景を整理します。私のYouTubeチャンネルでもSDGsについて詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。
「SDGsを経営に活用する理由と事例とメリット」
https://youtu.be/iAE6bIyG3fE
■解説
SDGs。
最近紙面やニュースでも目にすると思いますが、今回はこのSDGsについてコメントします。
まず、読み方ですが、「エス・ディー・ジーズ」と読みます。
日本語では「持続的な開発目標」と訳されてますが、「Sustainable Development Goals」の略称です。
SDGsは、国際社会が協力して2030年以降も地球が持続できる環境にするための課題リストです。そのリストは17個あり、更に169個の詳細な目標に細分化されています。
国連加盟国や国際機関、そして企業や市民が参加して皆で持続可能な社会を構築することをゴールにしています。
SDGsは、2000年に国際連合サミットで採択されたミレニアム開発目標(MDGs)がベースになっています。
当時のゴールは、以下の8つの項目が掲げられていました。
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ゴール1:極度の貧困と飢餓の撲滅
ゴール2:初等教育の完全普及達成
ゴール3:ジェンダー平等推進と女性の地位向上
ゴール4:乳幼児死亡率の削減
ゴール5:妊産婦の健康改善
ゴール6:HIV・エイズ・マラリア、その他疾病の蔓延の防止
ゴール7:環境の持続可能性確保
ゴール8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
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上記8つのゴールから見てわかるように、当初は先進国による途上国の支援が中心でした。
しかし残念ながらMDGsは多くの国や地域を巻き込んだ活動にまでは至らず、盛り上がりに欠けていたのが正直なところだと思います。
SDGsの普及は、経済界の動きとともに把握することで理解が深まります。
経済界では当初は「ESG経営」が重視されていました。
ESG経営とは、企業が長期的な成長を遂げるために3つの要素を重視する考え方です。
その要素は「環境」(E:Environment)、「社会」(S:Social)、「企業統治」(G:Governance)を指し、これら3つの頭文字から命名しています。
ここでいう「環境」とは、自然に対する配慮で、環境汚染や生物多様性、省エネ、CO2排出削量削減などへの配慮です。次の「社会」は、現在社会に及ぼす影響で、労働環境や人権問題、地域社会への貢献です。そして「企業統治」は、経営に関する様々な管理体制のことで、経営の透明性が高い企業や資本効率化への取り組みなどを指します。
ESG経営は、2006年に国際連合のアナン事務総長(当時)が機関開発投資家に対して投資の枠組みに入れる「責任投資原則」(PRI:Principles for Responsible Investment)の提唱を機に普及しはじめました。
さらに、それ以前から企業経営の世界では「企業の社会的責任」(CSR:Corporate Social Responsibility)を求める動きが学術界からあり、これがESG経営に発展していったわけです。
しかし当時は、まだスローガンで終わる企業が多かったというのが事実です。
2008年のリーマンショック以降、資本市場では短期的な利益追求に対する批判が強くなっていきます。
それを受けて「責任投資原則」に署名する機関投資家が増え始めたのです。
実際に「持続可能な社会」を構築しようとする企業は、結果的に高い利益を出し続けるという背景もあったことが確認できます。
また、無理に事業展開を行った結果、環境汚染や労働問題、社会問題へと発展し、結果的に企業価値を毀損する企業も徐々に見受けられるようにもなりました。
2010年頃には、これまであまり議論されなかった経済格差や自然破壊など、資本主義の「負」の側面も問題視されるようになりました。
その結果、2012年頃にはESG経営を取り入れた企業へ積極的に投資する機関投資家が増加し始めたのです。
そして2015年、ミレニアム開発目標の区切りの年に、新たにSDGsが設定されました。
先進国が決めた開発目標によって途上国から出た反発などの反省も含め、責任投資原則の急激な盛り上がりと併せて、SDGsの目標設定が見直されます。
そこで出来上がったのが、以下の「17の目標」と、169個に細分化された具体的な目標です。
SDGsに加盟している国は国連加盟国の193カ国で、各国は2030年に向けて取り組んだ成果を毎年詳細に公開し、7月頃に報告会を行います。
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【17の目標】
1:貧困をなくそう
2:飢餓をゼロに
3:すべての人に健康と福祉を
4:質の高い教育をみんなに
5:ジェンダー平等を実現しよう
6:安全な水とトイレを世界中に
7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8:働きがいも経営成長も
9:産業と技術革新の基盤をつくろう
10:人や国の不平等をなくそう
11:住み続けられるまちづくりを
12:つくる責任つかう責任
13:気候変動に具体的な対策を
14:海の豊かさを守ろう
15:陸の豊かさも守ろう
16:平和と公正をすべての人に
17:パートナーシップで目標達成をしよう
【具体的なターゲット目標】
※以下のように「17の目標」それぞれに細かい具体的目標が設定されています。
1.1:2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.2:2030年までに、各国定義のよるあらゆる次元の貧困状態にある、全ての年齢の男性、女性子供の割合を半減させる。
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2019年7月に発表されたSDGs達成ランキングは、日本は162カ国中15位。
「17の目標」のうち、達成した項目は「4:質の高い教育をみんなに」と「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」です。
また、日本が特に意識している課題は「5:ジェンダー平等を実現しよう」「12:つくる責任つかう責任」「13:気候変動に具体的な対策を」「17:パートナーシップで目標達成をしよう」の4項目を掲げています。
政府は「SDGsアクションプラン2020」を制定し、目標達成のために「3つの視点」(「経済やビジネス」「地方創生」「次世代・女性の活躍」)を掲げ、4,000億円の予算をかけて取り組んでいます。
一方、SDGsの取組は大企業や行政だけではありません。
例えば小さな店舗や中小企業もこの活動を推進しています。
広島県にあるパン屋さんは、食品ロスを解消する目的で週3日の午後だけ店を開け、基本的には4種類のパンのみを販売。シンプルなパンを提供することで食品ロスをなくし、従業員の労働時間を短縮することにも成功しています。
また、東京都の自由学園は教育の現場に食育を取り入れてSDGsの活動を行っています。
幼稚園から小学校、中学校、高校、更には大学まで一貫した教育を提供する中、給食で提供される食事を生徒が交代で作り、食材を園内にある畑から調達して、ご飯も園内で枝打ちした木々を使って薪窯で炊いています。このような活動を通じて「持続可能な社会」を教育にも取り入れています。
SDGsとは、普遍的な目標として世界中が取組んでいる活動です。
先進国と途上国、大企業も、中小企業も、皆が一緒に掲げ、将来の持続可能な環境を構築・維持するための取り組みと意識して、活動を始めることが大切です。