お風呂とセットで味わいたい
明礬温泉の名物スイーツ
もうもうと立ち上る湯けむりと硫黄の匂い。
この地を訪れた人たちは、まずこれに驚き、温泉に浸かる前から目と鼻で泉質の確かさを実感するといいます。
ここは別府市の高台にある明礬温泉。その名の通り、江戸時代から明礬(湯の花)が採取されていたという情緒ある温泉街は、湯量豊富で効能豊かな湯船が多くの人の心と体を癒してくれます。今回紹介する『桃たろう』は、この温泉街の一角にある甘味茶房。観光客だけでなく地元の人も足繁く通う、美味しくて気軽なお店なのです。
この店の名物は、温泉の噴気で蒸し上げた自家製の「湯けむりプリン」。店の入口横には噴気を利用した竃があり、ここに蒸篭を据えてプリンを蒸すのだそうです。種類はプレーンを中心に、塩やエスプレッソ、黒ごまなど。季節で変わることもありますが、4種前後のプリンが毎日ガラスケースに並びます。
「子どもにおやつとして作ったのが始まりで、それから店でも出すようになりました」と話すのは、本田尋子さん。お子さまのために作っていたプリンですから安全にも気を配っており、保存料や添加物などは一切使っていません。厳選した牛乳や卵に各種のフレーバーを加えたプリンは、素材の風味が生かされた優しい甘さと美味しさが口の中にジワリと広がります。
これだけでも十分に美味しいのですが、お好みのプリンとソフトクリームを合わせた「湯上りソフト」として食べるのも、この店ならではの楽しみかた。ひんやりと冷たく、甘くて豊かな味わいのソフト&プリンは、湯上がりの火照った体を優しく冷ましてくれます。
甘味茶房は、開放感あふれる露天風呂や家族湯で人気の立ち寄り湯『湯屋えびす』に併設されており、この湯けむりプリンも温泉とともに名物になっています。温泉の成分で殻が黒くなっている蒸し玉子の「黒たまご」やソフトドリンクなどもあり、居心地の良い店内で、ゆったりとくつろげます。
繊細な母の手と豪快な大地のエネルギーが作り上げた名物プリン。湯上りに食べれば、その味わいもひとしおです。