新鮮なネタを熟練の技で焼き上げた
名物の串焼きに心地よく酔う
温かみのある木造りの店内は、はじめて訪れた人でもホッとするような、どこか懐かしい空間。店の外や入口、さらには二階へ続く階段にまで、この店には同じ言葉が飾られています。
”平凡な味は正直いらぬ。煩悩に迷う我も凡夫なれば非凡な味を喰らいたい”
その言葉通り、ここは吟味した素材に工夫を凝らした、平凡ではない一品が味わえると評判の店。別府に根付いて21年目の『焼とり凡 母家』は、新宮通りと北浜通りをつなぐ、にぎやかな路地の一角にありました。
社長の田村英昭さんは、大学時代のアルバイトで焼とりに出会ったのちに、その店に就職。そこでさらなる修行を重ねて24歳で独立したという生粋の焼とり職人。そんな社長の店ですから、味へのこだわりは店の隅々にまで行き渡っているようです。
一本一本、手作業で仕込む串焼きは、鶏肉系を中心に豚肉系・牛肉系・魚介など、約40種。創業以来注ぎ足している秘伝のタレは、あっさりした味のなかに熟成された旨みが溶け込んでおり「このタレなら、いくら食べても食べ飽きない」と、味に厳しい地元のお客様にも評判のようです。
塩焼きの塩も、甘みのあるまろやかな塩味になるよう独自に調合されており、素材の持ち味を豊かに引き立てます。串焼きでは鶏のあらゆる部位が食べられるだけでなく、「極上和牛ロース串」や「イベリコ豚中落ちカルビ串」など珍しいものまであって、どれから食べようか悩んでしまうほど、その味わいも豊富です。串焼き以外にも大分名物のとり天や唐揚げ、魚料理や馬刺しなど多彩な料理が楽しめ、それに合うお酒も全国の地酒からワインまで幅広く揃っています。
「私が心がけているのは”お客様の期待を裏切らない”ということです。ウチの料理は安売りはしません。だけど、高くも売りません。常に適正な価格で、その価格以上の満足をお客様にお届けできるよう、私もスタッフも精進を重ねています」と、田村社長は穏やかに話してくれました。そんな真摯な味作りが多くの人に支持されて、今では3つの直営店を持つグループ店へと飛躍した『焼とり凡』。
「”凡”という字には、平凡などの”ふつう・なみ”という意味のほかに”あらゆる・すべて”という意味もあるんです。素人(凡)から始めた私が店を開き、スタッフと力を合わせて、あらゆる(凡)お客様に平凡ではない非凡な味を届けていけたら」
味はもちろん接客や店の雰囲気に至るまで、この店にはいろいろな”凡”があふれているようです。そんなお話をうかがうと、目の前の串焼きが一層味わい深いものになりました。